改訂新版 世界大百科事典 「カーリミー商人」の意味・わかりやすい解説
カーリミー商人 (カーリミーしょうにん)
アイユーブ朝からマムルーク朝の中期まで,紅海経由の香辛料貿易に活躍したイスラム商人の呼称。カーリミーKārimīの語源であるカーリムの語は〈回船〉あるいは〈船主グループ〉の意味で,すでにファーティマ朝時代から用いられていたが,その起源については不明な点が少なくない。彼らは〈カーリミーの長〉と呼ばれる組合長の下に商人組合を結成し,自らの船舶を所有すると共に,通商路上の主要都市に専用の商館を置いてこれを取引所,倉庫,宿泊用に利用した。取扱商品は香辛料,織物,木材,鉄,砂糖,小麦など多様であったが,〈胡椒と香料の商人〉と呼ばれたことから明らかなように,中心はやはり香辛料であった。アデンでインド商人から香辛料を買い取り,これを紅海,アイザーブ,ナイル川経由でカイロやダマスクスに運び,アレクサンドリアでヨーロッパ商人に売り渡した。この貿易で莫大な利潤を得たカーリミー商人は,モスク,学院,病院などを建設するほか,政府への貸付事業も行ったが,マムルーク朝スルタン,バルスバイの専売政策により打撃を受け,15世紀半ば以降は政商化した商人がこれにかわった。
執筆者:佐藤 次高
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