(1)16世紀末から18世紀にかけて踊られたフランスの宮廷舞曲。名称はプロバンス地方の山岳民族ガボ族に由来する。16世紀の舞曲ブランルbranleから発展した4/4拍子,ないしは2/2拍子の中庸の速さの舞曲で,たいてい4分音符2個を上拍に置く。楽曲構造は2部形式である。17世紀の中ごろ,リュリがオペラやバレエに導入してから流行しはじめ,フランス,ついでドイツにおいて組曲中の一楽章として用いられるようになった。代表例としてはクープランのクラブサン組曲,J.S.バッハのクラビア組曲,管弦楽組曲があげられる。古典派以降はメヌエットに押されて衰退したが,グルック,ゴセックらに使用例があり,現代ではR.シュトラウス,シェーンベルク,プロコフィエフらがガボットを書いている。(2)今日でも主としてブルターニュ地方で踊られている民族舞踊。拍子,ステップ,編体は多岐にわたるが,いずれも軽快な舞踊曲である。
→組曲 →舞曲
執筆者:高野 紀子
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舞曲の名称。2分の2拍子の陽気な舞曲で、中庸の速度をもち、2拍目から始まることが多い。名称は南仏ガプ地方の住民のガボGavotsに由来するといわれる。ステップは、16~17世紀に流行したブランルbranleと同じであるが、舞踊史上の古典として重要なアルボーThoinot Arbeau(1519―88)の著書『Orchésographie des danses』によると、「足を交差させたのち跳躍する」ところが異なり、最初は2列になって踊られたという。この形は、現在でもブルターニュ地方をはじめフランス各地に残っている。しかし17世紀以降は、ルイ14世の宮廷で好まれた男女のカップルによる踊り方が広まり、舞踏会ばかりでなくオペラやバレエにも登場した(リュリ、ラモー、ヘンデル、グルック)。また器楽の分野では、鍵盤(けんばん)組曲に欠かせない舞曲の一つとなり、さらにバイオリン・ソナタや管弦楽曲でも頻繁に用いられた(F・クープラン、ラモー、パーセル、コレッリ、J・S・バッハ、ヘンデル)。なお、19世紀にもヨハン・シュトラウス、サン・サーンス、プロコフィエフらの例がみいだされる。
[関根敏子]
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…また中世のヨーロッパでは,農民の踊る荒々しい踊りは身分の高い男女にはふさわしくないとされた。宮廷では,ゆったりとした音楽による,踊りの規則のやかましいものへと変化して,優雅なメヌエット,ガボット,カドリーユなどが生まれた。フランス革命後,宮廷での儀式的なものより庶民的な踊りが好まれるようになり,古くからオーストリアの山岳地方で行われていた舞踊レントラーLändlerがしだいにワルツに発展,ウィーンを中心にヨーロッパ全域へと爆発的な流行をもたらした。…
※「ガボット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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