フランス第三共和政の樹立と安定に寄与するところの大きかった政治家。第二帝政末の1868年,ボーダン事件で逮捕されたドレクリューズの弁護士として,法廷で第二帝政を激しく糾弾して一躍有名になった。翌年の議会選挙にパリの労働者居住街区として知られたベルビルから立候補,このとき選挙民の要求に従って提出した〈ベルビル綱領〉は,急進共和派の路線を示したものとして知られている。70年,スダンにおけるナポレオン3世のプロイセン軍への降伏の報に接するや,パリに樹立された国防政府の内相となり,プロイセン軍への徹底抗戦を主張,包囲されたパリを気球で脱出してトゥールにおもむき,戦争指導にあたった。パリ開城後も抗戦を主張して内相を辞任,71年2月の議会選挙で9県より選出され,急進派の指導者となった。3月のパリ・コミューンの蜂起に直面して,政治的安定は共和政の樹立によってしか実現しないと判断したティエールの支持をも得て,強力な王党派と対決し,とくに地方に足を運んで農民層の共和政への支持を固めて,第三共和政の基礎を築いた。反教権主義を唱えて共和派の結集に努め,その後の王党派の反攻を打破することにも成功し,79年に下院議長,81年には首相となった。しかしこの時点で彼の急進派的な性格は失われ,その立場は以後第三共和政与党を特徴づける穏健な共和主義(オポルチュニスム)となった。
執筆者:喜安 朗
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フランスの政治家。第三共和政初期を代表する共和主義者。第二帝政末期、法曹界から政界に入り、1869年に下院議員、1870年、プロイセン・フランス戦争で帝政が倒れたとき、国防政府に加わり、パリから軽気球で脱出、抗戦に努めた。1871年から下院議員、以後、第三共和政の確立に尽くし、1877年には王党派の動きを抑えた。共和政の定着につれて、妥協的で時宜にかなった政策をとり、それは「オポルチュニスム」とよばれた。1879~1881年に下院議長、1881年11月に首相となったが、選挙制改革を目ざして反対され、翌1882年1月辞任。拳銃(けんじゅう)暴発(情人とのいさかいの際ともいう)がもとで急死した。演説集、書簡集がある。
[山上正太郎]
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1838~82
フランスの政治家。ナポレオン3世の専制を批判。1870年,パリに成立した国防政府に参加し,内相として対ドイツ抗戦に努力。第三共和政成立期に農村で共和政支持者の獲得に努めた。その共和主義はしだいに穏健化。81~82年首相。
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…以後このような点を急進主義の特徴とみなすことができるようになる。 第二帝政末期の1869年に議会選挙に立候補したガンベッタが政綱とした〈ベルビル綱領〉は,フランスにおける急進主義の立場を体系的に提示したものとみなされた。70年代の第三共和政の成立にあたり,ガンベッタは政治制度の共和主義化を唱えつつ,小市民層の社会的な保守性をこの共和主義信仰へと結集したのである。…
…パリ・コミューンの民衆蜂起に直面した彼は,これを鎮圧するとともに,革命の再発を回避する役割を果たすのは共和政以外にないと認識するにいたった。そこで急進共和派のガンベッタとひそかに意を通じ,議会で多数を占める地方の地主・名望家層を代表する王党派を牽制し,王政の復活を防ぐことに努めた。ガンベッタは〈地方と農村に基づく共和的未来〉をめざして,小農民層を共和主義に結集する運動を展開,小農民主主義の伝統を復活させた。…
…一定の原理や原則よりもむしろ変化する状況に応じて行動すること。19世紀フランスの政治家L.ガンベッタが共和主義的政策をより現実的な形で実施するために共和主義の原則の一部を犠牲にしようとしたのを当時の世論がオポチュニスムと呼んだことが,この言葉の起源といわれる。また革命運動において,状況の不利を理由に革命への態度を後退させることが〈右翼日和見主義〉と呼ばれる場合がある。…
※「ガンベッタ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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