キアズマ(読み)きあずま(英語表記)chiasma

翻訳|chiasma

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キアズマ」の意味・わかりやすい解説

キアズマ
きあずま
chiasma

減数分裂前期で、2本の対合した染色体は1個またはそれ以上の箇所交差し、その部分で染色体の交換がおこる。このような染色体の交差個所がキアズマ染色体交差ともいう。減数分裂前期で相同染色体は対合して二価染色体となる。二価染色体はそれぞれ複製によって2本ずつの染色分体となり、結局1個の二価染色体は4本の染色分体からなっている。第一減数分裂で、二価染色体はその対合面または複製面で分かれるが、そのとき、対合した染色体間で交差がおこり、キアズマが生ずる。キアズマは相同染色体の交差によって生ずるという説はヤンセンスFrans Alfons Janssens(1863―1924)やダーリントンによって主張された。対合した染色体はキアズマの箇所で接着し、ほかの部分では離れているので、染色体にはいくつかの環状部がつくられる。その輪の開く面がどこでも還元的である、すなわち相同染色体間で開くというのが一面説(ダーリントン)で、これに対し動原体を含む環状部分は還元的に開くが、その隣接する環状部分は均等的に開く、すなわち複製した染色体間で開くというのが二面説(サックス)である。これに対し、4本の染色体と4個の動原体の分かれ方は自由で、確率的に還元と均等は1対2になるというのが新二面説(松浦一(はじめ))である。新二面説は、遺伝学的な交差に対応するデータが少ないが、一面説は、細胞学的および遺伝学的に支持するデータが多い。同一染色体上にある遺伝子は、分離の際に互いに連なって行動するはずであるが(これを連関という)、しばしば連関しないで行動することがある。これは、相同染色体間でキアズマをつくり、その部分で交換がおこるためである。

[吉田俊秀]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キアズマ」の意味・わかりやすい解説

キアズマ
chiasma

染色体交差ともいう。生殖細胞を生じる減数分裂の複糸期で,対合した相同染色体の4染色分体のうち2つの染色分体だけが部分交換を行なって,数ヵ所で1対ずつに乖離しはじめるが,なお数ヵ所は結びつきX字形を呈する。この交差した部分をキアズマという。この際,遺伝子の乗換えが起ることがある。

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