改訂新版 世界大百科事典 「キキョウラン」の意味・わかりやすい解説
キキョウラン
Dianella ensifolia DC.
日本では本州,四国,九州の南西部の海岸地帯と沖縄諸島に野生するユリ科の多年草。茎は高さ60~80cmで,上部は円錐花序となる。葉は根もとに集まり2列互生し,基部は扁平で重なり合う。葉身は線形で,長さ50cm程度,質はかたい。花期は7~8月。花被片は淡紫色で,黄色の葯とのコントラストは鮮やかである。花糸はS字形に曲がり,上部は肥大する。葯は裂開せず,頂部の孔から花粉を出すという特殊な性質をもっている。果実は漿果(しようか)で直径1cmくらいの球形,熟すと光沢のある鮮やかな青紫色に色づく。有毒植物で,漢方ではかゆみ止めの外用薬に用いる。マレー半島では根を干して香料とする。
キキョウラン属は東南アジアからオーストラリアにかけて分布する約10種を含む小さなグループである。最も分布の広いキキョウランは変異も多く,何種にも分ける見解がある。
執筆者:矢原 徹一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報