日本大百科全書(ニッポニカ) 「キクガシラコウモリ」の意味・わかりやすい解説
キクガシラコウモリ
きくがしらこうもり / 菊頭蝙蝠
horseshoe bat
広義には哺乳(ほにゅう)綱翼手目キクガシラコウモリ科に属する動物の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。この科Rhinolophidaeの仲間は、ユーラシア、アフリカおよびオーストラリアに分布する。1属69種からなり、最古の化石はヨーロッパの始新世から知られる。種のキクガシラコウモリRhinolophus ferrumequinumはユーラシアとアフリカに分布し、日本では北海道から屋久島(やくしま)まで生息する。前腕長59~62ミリメートル、頭胴長62~73ミリメートル。顔に鼻葉をもち、耳介の先はとがり、耳珠を欠き、迎珠が顕著で、尾膜、翼が幅広い。鼻葉は馬蹄(ばてい)状の前部、三角状の後部、鞍(くら)状の中部の3部に分かれる。胸郭は頑丈で、前顎骨(ぜんがくこつ)は軟骨状で周りの骨から遊離する。洞窟(どうくつ)、廃坑、まれに人家などに普通単独か数頭、ときに100頭ほどの群れですむ。低空をゆっくり飛行しながら、コガネムシなどの大きい昆虫を捕食する。初夏に1子を産む。赤裸で生まれた新生子は、毛が生えて親の3分の2大になるまで親の胸に絶えず抱かれており、コキクガシラコウモリR. cornutusのように幼児集団をつくらない。
[吉行瑞子]