改訂新版 世界大百科事典 「キジノオシダ」の意味・わかりやすい解説
キジノオシダ
Plagiogyria japonica Nakai
山林中の陰地に生じるキジノオシダ科の常緑性シダ。胞子葉と栄養葉がはっきり区別でき,ほぼ直立する胞子葉は高さ1mに達する。根茎は直立し,葉を叢生(そうせい)する。鱗片も毛も,植物体のどこにも生じない。葉は2形を示す。栄養葉は単羽状,葉脈は叉(さ)状分岐をし,網目をつくらない。胞子葉の羽片は狭くなり,裏面の脈に沿って胞子囊がつき,羽片の辺縁が反転して包膜のようにおおう。関東地方と北陸地方から西の本州と四国,九州にみられ,済州島と中国(長江沿いの各省)に分布する。近縁のヤマソテツP.matsumureana(Makino)Makinoは日本海側の温帯域に産し,羽片が鋸歯縁となる。アメリカ産の種は,この型のものばかりである。
キジノオシダ科Plagiogyriaceae
葉柄基部が左右に広がり,背面には皮目に似た隆起がならぶ。ゼンマイ科に近いものとみなされており,1属約40種が記録されている。東アジアに最も多く,東南アジアと,メキシコからアルゼンチンまでの中南米とに分布しており,環太平洋分布の典型的な例である。
執筆者:岩槻 邦男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報