きだみのる(読み)キダミノル

デジタル大辞泉 「きだみのる」の意味・読み・例文・類語

きだ‐みのる

[1895~1975]小説家鹿児島の生まれ。本名山田吉彦パリ大学で古代社会学を学び、独自の文明批評を展開した。著「気違い部落周游紀行」「道徳を否む者」、共訳に「昆虫記」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「きだみのる」の意味・わかりやすい解説

きだ・みのる
きだみのる
(1895―1975)

小説家。本名山田吉彦。奄美(あまみ)大島名瀬(なぜ)の生まれ。アテネフランセの創設者J・コットの薫陶を受け、パリ大学で古代社会学を専攻ファーブル『昆虫記』、レビ・ブリュールなどの訳著がある。東京・八王子市外の閉鎖的な一集落を鏡として、生態史的な方法によって日本文化の原形を探った小説『気違い部落周游(しゅうゆう)紀行』(1946。毎日出版文化賞)、エッセイ『日本文化の根底に潜むもの』(1956)などで文壇新風を吹き込み、自伝風の『道徳を否(いな)む者』(1955)、『単独生活者の手記』(1963)のほか、大船渡(おおふなと)市に転住して「気違い部落」の漁村版『渚(なぎさ)と潮』(1961)を書いた。

[高橋新太郎]

『『きだみのる自選集』全4巻(1971・読売新聞社)』『『気違い部落周游紀行』(冨山房百科文庫)』

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百科事典マイペディア 「きだみのる」の意味・わかりやすい解説

きだ・みのる

小説家,エッセイスト。本名山田吉彦。奄美大島生れ。慶応大学理財科中退。パリ大学でマルセル・モース師事。《気違い部落周游紀行》(1948年)で毎日出版文化賞受賞。東京近郊の村落共同体の持つ日常的な論理を描くことによって,特異な文明批評の観点を確立した。翻訳レビ・ブリュール《未開社会の思惟》,ファーブル《昆虫記》(林達夫と共訳)などがある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「きだみのる」の意味・わかりやすい解説

きだみのる

[生]1895.1.11. 鹿児島,名瀬
[没]1975.7.25. 武蔵野
小説家。本名,山田吉彦。慶應義塾大学理財科中退,文学部にも学んだ。第2次世界大戦後,疎開地での混乱現象を風刺した『気違い部落周游紀行』 (1946) で一躍有名になり,『部落の幸福論』 (58) ,『東京きちがい部落』 (60) などの作品で文明批評を行なった。翻訳の名著に L.レビ=ブリュールの『未開社会の思惟』 (35) ,『ファーブル昆虫記』 (58,共訳) がある。

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