きづた
L'edera
イタリアの女流作家G・デレッダの長編小説。1908年刊。サルデーニャ島の一山村を舞台にし、あらがいがたい運命の力に翻弄(ほんろう)される女主人公の犯罪と贖罪(しょくざい)とをテーマにしている。その題材と心理描写と神秘性のゆえにドストエフスキーの『罪と罰』の影響が指摘され、同時に、サルデーニャの風土と人間を描出した写実性と地方性のゆえにベリズモの文学に分類される。しかし、この作品には歴史的、社会的視野が欠落している点を強調しておかねばならない。作者の問題意識はあくまでも特定の個人の内面にとどまっていて、その意味では、むしろ単なる大衆小説の域を出ていない。
[鷲平京子]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例