日本大百科全書(ニッポニカ) 「キノグナトゥス」の意味・わかりやすい解説
キノグナトゥス
きのぐなとぅす
cynognathus
[学] Cynognathus crateronotus
中生代三畳紀前期から中期にかけての、約2億5100万年~2億2800万年前に南アフリカや南アメリカに生息していた肉食の哺乳(ほにゅう)類型爬虫(はちゅう)類。全長約1.5メートルで、単弓(たんきゅう)亜綱獣弓(じゅうきゅう)目(獣窩(じゅうか)目)の獣歯類(犬歯類)亜目とよばれる動物のなかで典型的な種類であった。イヌに似た大きな頭骨があり、また大きな犬歯をもっていて、物を突いたり裂いたりして、この動物の捕食性が強かったことを示す。犬歯よりも前部のあごのところに杭(くい)のように小さな切歯があって、物をかみ切るのに適応していた。左右各9本ずつあった頬歯(きょうし)は食物を切り刻み、そしゃくするのに役だった。二次口蓋(こうがい)が発達していて、すでに鼻腔(びこう)と口腔が隔てられていた。これは、食物を飲み込むときに、食物が鼻孔に入るのを防いだ。あごを大きく開き、かみ合わせの力も大きかった。骨盤は哺乳類に似て、四肢は膝(ひざ)が前方へ突き出して、肘(ひじ)がやや後方へ曲がった形となっていて、いわば運動しやすい姿勢であった。
[小畠郁生]
『J・C・マクローリン著、小畠郁生・平野弘道訳『消えた竜』(1982・岩波書店)』▽『金子隆一著『哺乳類型爬虫類――ヒトの知られざる祖先』(1998・朝日選書)』