中生代を三分したうちの最初の地質時代で、ペルム紀(二畳紀)とジュラ紀との間の約2億5217万年前から約2億0130万年前までの約5087万年の期間に相当する。三畳紀に形成された地層を三畳系という。三畳紀の名称は、この時代の地層の古典的研究が行われたドイツで、堆積(たいせき)条件の異なる三つの地層群が累重していることに由来し、1834年に地質学者のフォン・アルベルティが名づけたのに始まる。しかしドイツでは海成層は三畳紀の中期に限られているので、国際的な標準としてはアルプスやヒマラヤ、さらにカナダ北部の海生動物化石に富む地層に基づいて国際的な時代区分が行われている。一般には、前期(インドュアン、オレネキアン)、中期(アニシアン、ラディニアン)、後期(カーニアン、ノーリアン、レーティアン)の3期7階に区分されている。
古生代末には地球上の全大陸が一つに接合して超大陸パンゲアが生じ、これに対立する超大洋のパンタラッサが存在した。また、ペルム紀の終わりには世界的な海退がおこり、これに呼応するかのように海生動物界に大変革を生じた。これまで栄えていた多くの大分類群が一斉に絶滅あるいは衰退し、三畳紀初期には海生動物の多様性が著しく減少した。しかし、この危機を乗り越えたいくつかの分類群から新しい大発展がおこり、古生代型の海生動物にかわって、六放サンゴ、セラタイト型アンモナイト、種々の翼形(よくけい)二枚貝などが発展するようになった。海成層の示準化石(標準化石)としては、セラタイト類、翼形二枚貝(ダオネラ、ハロビア、モノチスなど)のほか、原生生物の放散虫や所属不明の動物コノドントが重要である。三畳紀末にはふたたび広範な海退と海生動物界の変革があった。これに対して陸上の動植物はペルム紀中に大きな変革を終えていて、ペルム紀と三畳紀、三畳紀とジュラ紀の間にそれほど急激な変化を生じていない。爬虫(はちゅう)類では、ジュラ紀に巨大化する恐竜の祖先型や、哺乳(ほにゅう)類への移行型とみられるものが知られている。植物では裸子植物、シダ植物の発展が著しく、古生代後期から引き続いて南北の超大陸の間でゴンドワナ植物群とアンガラ植物群の対立がみられる。
三畳紀は大規模な海進がなかったので、安定大陸上には陸成層や台地玄武岩が知られ、海成層はほとんど分布していない。テチス海域や環太平洋の変動帯および準安定地域にはしばしば石灰岩や層状チャートを含む三畳紀の海成層が発達している。これらは、プレートテクトニクスの発展に伴って、海洋底堆積物が小陸地とともにプレートの水平運動によって大陸縁部に順次付加されて形成されたと解釈されるようになった。
日本の三畳紀層は、かつては分布が狭いと考えられたが、従来古生代とされてきた外帯(太平洋側)各地のチャート層や石炭岩から相次いで本紀を示すコノドント化石が検出された。さらに放散虫の研究により、これらの多くはジュラ紀から白亜紀前期の泥質岩にとりこまれた異地性の岩体であることが判明した。これらは激しく褶曲(しゅうきょく)しているが、もともとは広大な海洋底にたまった薄い堆積物で、大陸縁をなしていた日本列島に付加されたと考えられている。一方、内帯(日本海側)および外帯の一部には、三畳紀前後に形成された花崗(かこう)岩や広域変成岩とすでに付加されていた古生代の地層が分布し、これらを基盤とする三畳紀後期の陸棚性ないし瀕海(ひんかい)性の厚い堆積物がいくつかの小地域に分布する。これらはしばしば炭層を含み、産出する軟体動物化石にはシベリア方面と共通する種が多く知られている。
[速水 格・小澤智生 2015年8月19日]
『市川浩一郎他著『改訂新版地史学 下巻』(1967・朝倉書店)』▽『木村敏雄・速水格・吉田鎮男著『日本の地質』(1993・東京大学出版会)』▽『ドゥーガル・ディクソン著、小畠郁生監訳『生命と地球の進化アトラスⅡ デボン紀から白亜紀』(2003・朝倉書店)』
中生代を三つに分けたうちの第1の時代で,この時代に形成された地層を三畳系Triassic systemという。現在から約2億4800万年前に始まり,約2億1300万年前に終わる約3500万年の期間に相当する。この名称は1834年にF.A.vonアルベルティが南ドイツで三つの堆積条件の異なる地層群が重畳していることから名づけたのに始まる。国際的な標準としては,より海生動物化石の豊富なアルプスやカナダ北部の層序が用いられる。全体で約20のアンモナイトによる化石帯が認められ,国際対比が行われている。海生動物は二畳紀末に起こった大量絶滅により著しく多様度が減じたが,三畳紀の間に新しい分類群が次々に出現し,後期にはほぼ多様性を回復した。軟体動物では,アンモナイト(セラタイト類)や薄い殻をもつ翼形類に属する二枚貝(ダオネラ,ハロビア,モノチス)が繁栄し,示準化石として重視されている。コノドントは所属不明の化石であるが,層位学上きわめて重要で,これによって三畳紀の地史が大きく解明された。日本の三畳系の分布は著しく狭いとされていたが,近年の研究により,従来古生代後期の地層とされてきた遠洋性の石灰岩,角岩,海底火山岩のかなりの部分が三畳紀に形成されたことがわかってきた。後期になると,列島の大陸側では日本最古の石炭層を含む厚い内湾ないし汽水性の堆積物を生ずるが,太平洋側では外海性の堆積物が引き続き優勢である。
→地質時代
執筆者:速水 格
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…すなわち,古生代末には三葉虫,四射サンゴ,フズリナなどが絶滅し,その他の海生の動物分類群も大きな打撃を受けて内容が一新している。アンモナイト類では古生代に栄えたゴニアタイト類が絶滅し,代わって三畳紀を特徴づけるセラタイト類が繁栄するようになった。中生代末にはアンモナイト,恐竜などの絶滅が起こっている。…
※「三畳紀」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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