キムチ(読み)きむち

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キムチ」の意味・わかりやすい解説

キムチ
きむち

朝鮮漬物総称で、沈菜(チムチェ)とも書く。辛いとされる朝鮮料理のなかでの代表格で、朝鮮の食生活に欠かせない菜であり、飯にキムチとスープはかならずつけられる。ダイコン白菜(ペチュ)、青菜(あおな)類を塩漬けにしてから、薬味とあわせて漬け込む。白菜(ペチュ)ギムチを例にとると、四つ割りにした白菜の間に塩をふり、ほぼ一昼夜置いて水洗いしてから水をきり、あわせた薬味を葉の間に擦り込み、壺(つぼ)や甕(かめ)に漬け込む。薬味は、粉唐辛子、おろしにんにく、果物細切り、ネギ、ニラショウガ、昆布、塩辛などを好みで混ぜ合わせてつくる。漬けるとき落し蓋(ぶた)をして密閉はするが重石(おもし)はしない。キムチにトウガラシが用いられるようになったのは17世紀の後半ごろからで、このころからキムチの作り方が多様になった。それまでは薬味にニンニクサンショウ、ショウガを用いておもに塩だけの単純なもので、いまでも辛くないキムチは食べられている。キムチの種類はきわめて多く、数十種に達する。おもなものは、白菜(ペチュ)ギムチのほかに、ダイコンの角切りのカットウギ、キュウリのオイギムチ、野菜を丸漬けにしたトンギムチや、水分をも食べる水ギムチなどがよくつくられる。

 秋の野菜の収穫時には、冬に備えてのキムチ作りが各地で一斉に始まる。キムジャンとよばれる朝鮮の年中行事であり、これが終わらないと冬は越せないとされる初冬風物詩である。冬以外のキムチは浅漬けが多い。水分たっぷりのよく漬かったキムチには、乳酸菌やビタミンも多く、飯とキムチだけという粗食で庶民の健康を支えた食べ物でもある。近年、日本でも朝鮮料理のキムチは普及し商品化されるようになった。

[鄭 大 聲]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キムチ」の意味・わかりやすい解説

キムチ
kimch'i

朝鮮の漬物の総称。代表的な野菜副食品で,秋に入るとつくりはじめ,2~3月までそれを食べる。春から夏の間は,少しずつ漬けてすぐ食べる。さまざまな種類があり,40~50種に及ぶ。北部では一般に薄味,南部では辛く漬け,日常の食卓に欠かせないもので,宴会にも出される。代表的なものに,丸ごと塩漬けした白菜の間に,にんにく,唐辛子,果物,松の実,魚介類,あみの塩辛などをはさんで陶製の大瓶に漬込んだベチュトンキムチがある。

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