キンシバイ(読み)きんしばい

改訂新版 世界大百科事典 「キンシバイ」の意味・わかりやすい解説

キンシバイ (金糸梅)
Hypericum patulum Thunb.

庭に栽培するオトギリソウ科の落葉低木。中国原産で,平賀源内の《物類品隲(ひんしつ)》によると1760年(宝暦10)に日本に伝来したという。まれに川岸岩場に野生状に生えていることがある。基部から多く分枝し,枝は開出して先が垂れ下がる。葉は卵状長楕円形で対生し,毛がなく,葉の裏は少し緑白色となる。6~7月ころ,枝先に直径3cm内外の美しい黄色の花をつける。花弁は5枚,おしべ多数あって五つの束になっている。切花として用いられ,株分け挿木によって繁殖させる。ビヨウヤナギH.chinense L.var.salicifolia(Sieb.et Zucc.)Choisyも中国原産で,庭に栽培される。葉は狭長楕円形,夏に咲く花は黄色で直径4~6cmに達する。おしべは多数あって長い。花の少なくなった時期に咲く花として切花に用いられる。繁殖は主に株分けによる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「キンシバイ」の意味・わかりやすい解説

キンシバイ
きんしばい / 金糸梅
[学] Hypericum patulum Thunb.

オトギリソウ科(APG分類:オトギリソウ科)の半常緑低木。高さ約1メートルの株立ちになる。樹皮は褐色で縦に裂けてはげる。葉は無柄で対生し、卵状長楕円(ちょうだえん)形、長さ2~4センチメートルで両面に毛がなく、全縁。冬でも葉の一部が残り、葉には透明な油を含んだ点がまばらにある。6~7月、やや垂れた小枝の先に径約3センチメートルの黄色花が2、3個、集散花序になって開く。花弁はほぼ円形で5枚あり、雄しべは多数で5群に分かれ、花糸は黄色で花弁より短く、花柱は5本ある。果実は卵形、長さ1センチメートルの蒴果(さくか)で、9~10月に褐色に熟して5裂する。中国中南部原産で、日本へは1760年(宝暦10)に渡来した。ウメの花に似て、金糸のような雄しべがあることから、中国では金糸梅とよんでおり、和名もこれに基づく。暖地の庭園に植えられ、人家に近い山地に野生化もしている。適湿の肥沃(ひよく)地でよく育ち、繁殖は実生(みしょう)、挿木、株分けによる。

小林義雄 2020年7月21日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キンシバイ」の意味・わかりやすい解説

キンシバイ(金糸梅)
キンシバイ
Hypericum patulum

オトギリソウ科の半落葉小低木。中国原産で庭園に栽植されている。茎は細く,枝分れが多い。高さ 1mに及ぶ。葉は対生し,無柄で卵状長楕円形,全縁で質は薄い。裏面は白緑色で透かしてみると油点がまばらに見える。夏に,枝の先に径 3cmあまりの美しい黄色の5弁花をつける。おしべは多数あり,基部で癒着して束になっている。

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百科事典マイペディア 「キンシバイ」の意味・わかりやすい解説

キンシバイ(金糸梅)【キンシバイ】

中国原産のオトギリソウ科の半常緑性小低木。江戸時代中ごろに渡来したといわれる。高さ1mくらいになり,柄のない卵状長楕円形の葉を対生する。6〜7月,枝端に集散状につく花は径3〜4cm,光沢のある美しい黄色の花弁が5枚で,多数のおしべは5束をなし,花柱も5本。庭木,切花用。株分け,挿木でふやす。

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