キンモグラ(その他表記)Cape golden mole
Chrysochloris asiatica

改訂新版 世界大百科事典 「キンモグラ」の意味・わかりやすい解説

キンモグラ
Cape golden mole
Chrysochloris asiatica

別名ケープキンモグラモグラに似るが尾がない食虫目キンモグラ科の哺乳類。南アフリカケープの草原にトンネルを掘ってすむ。体長9~11cm。淡褐色~暗褐色の短い上毛が金属様に緑,青,紫に強く光るのでこの名がある。体は円筒形で吻(ふん)がとがり,吻端には角質板がある。目は皮下に埋まり,耳介がない。四肢は短く,前足には4本のつめがあるが第4指のは痕跡的,第3指のつめが最大で第2指のがそれに次ぎ,ともに琴のつめ状である。後足には5指がある。テンレック近縁で上の臼歯(きゆうし)の錐(すい)(とがった部分)がV字状に並ぶ。別系統のモグラ科に似るため,収れん進化の例にあげられる。単独ですみ,トンネル内でミミズ,ジムシ,アシナシトカゲなどを捕食するが,雨の日には地上でも食物を探す。雨季の4~6月に地中に草で球形の巣をつくり,ふつう2子を生む。キンモグラ科Chrysochloridaeにはほかに砂地にすむサバクキンモグラEremitalpa granti,森林にすみ体長23.5cmに達するオオキンモグラChrysospalax trevelyaniなど,ケニア以南のアフリカに7属17種がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「キンモグラ」の意味・わかりやすい解説

キンモグラ
きんもぐら / 金鼹鼠
golden mole

哺乳(ほにゅう)綱食虫目キンモグラ科に属する動物の総称。この科Chrysochloridaeの仲間はアフリカに産し、モグラ型の外形と生態をもつ動物であるが、系統的にはユーラシア、北アメリカのモグラ類とはまったく異なる。ビントンキンモグラ属、オオキンモグラ属など5属があり、体長は8~23センチメートルで、いずれの種も目は退化して皮下に埋まり、耳介と尾を欠く。前足は短く、4指があり、通常第3指は巨大なつめをもつため最大で、第2指はやや小さく、第1、第4指はそれらより著しく小さい。体毛には緑色、紫色、黄色、赤色などの金属光沢がある。頭骨は脳頭蓋(とうがい)の幅が広く、吻(ふん)が狭い。歯式は

で36~40本。

 生活はモグラに似た地下性で、巨大な前足のつめでトンネルを掘り、ミミズや昆虫を食べる。また、乾燥地にすむビントンキンモグラCryptochloris wintoniはアシナシトカゲを主食にするという。雨期にもっとも活動的であるが、乾期には夏眠をするといわれる。地中に巣をつくり、2~6子を産む。

[阿部 永]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キンモグラ」の意味・わかりやすい解説

キンモグラ
Chrysochloridae; golden mole

食虫目キンモグラ科の動物の総称。体長7~23cm。アフリカに固有で,ケープキンモグラ Chrysochloris asiatica,オオキンモグラ Chrysospalax trevelyaniなど 11種がある。眼が退化し,耳介がなく,地下にトンネルを掘って生活をすることは普通のモグラに似るが,本科では尾がまったくなく,前肢の4指のうち,3指が著しく大きいところが異なる。ミミズ類や昆虫類の幼虫などを食べる。普通日夜活動するが,オオキンモグラは夜,地上に出てきて採食する。地下のトンネル内に草を用いて巣をつくる。1腹2子ほどを出産する。

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