日本大百科全書(ニッポニカ) 「ギャスコイン」の意味・わかりやすい解説
ギャスコイン
ぎゃすこいん
David Emery Gascoyne
(1916―2001)
イギリスの詩人。聖歌隊学校と美術工芸学校を卒業。16歳で詩集『ローマのバルコニー』(1932)を出版、早熟な才能を示した。のちフランスに渡り、シュルレアリストたちと交際、エリュアール、アラゴン、ツァラらの詩を翻訳し、紹介書『シュルレアリスム管見』(1935)を出版、自らもその影響の色濃い幻想的なイメージあふれる作品を発表して、1940年代の新ロマン主義のもっとも有望な詩人と目された。この期の作品は『詩集1937~42』(1943)に収められている。のちヘルダーリンの影響を受けて詩風がより瞑想(めいそう)的なものに移り、宗教的深みをもつ『漂泊者』(1950)がつくられた。長詩『夜想』(1956)はダンテ的な悪夢の世界をさまざまな実験的手法で描いた野心的な試みである。これらは『全詩集』(1965)にまとめられている。ほかに散文作品として『パリ日記 1937~1939』(1978)がある。
[出淵 博]
『篠田一士訳『詩集1937~42(抄)』(『世界名詩集大成10 イギリス2』所収・1965・平凡社)』