日本大百科全書(ニッポニカ) 「クジャクヤシ」の意味・わかりやすい解説
クジャクヤシ
くじゃくやし / 孔雀椰子
wine palm
toddy palm
[学] Caryota urens L.
ヤシ科(APG分類:ヤシ科)クジャクヤシ属の1種。幹は直立する単幹で高さ20メートル。葉は長さ5、6メートルで光沢のある暗緑色を呈し、2回全裂羽状葉。小葉は横断面がV字状(内向鑷合(じょうごう)状)をなす。通常、ヤシ科の羽状葉の小葉は逆V字状(外向鑷合状)であるが、羽状葉小葉の横断面がV字状のものはクジャクヤシとフェニックスの2属だけである。単性花で雄花の翌年に雌花が開花する。肉穂花序は長さ3メートルで数珠(じゅず)状の束をなして下垂する。果実は球形で径1.5~2センチメートル、暗青色または赤褐色。種子は球形で光沢のある黒色。花序は葉柄着生部の環状節で葉柄との間につぼみをつけ、開花期に最上部のつぼみから開花し始め徐々に下方の環節にわたって開花し、最下部の開花、結実が終わると全体が枯死する。花柄を切断すると樹液が出るが、これは飲料となり、煮つめると砂糖になり、発酵させるとヤシ酒にもなる。髄からはサゴデンプンがとれる。近縁のコモチクジャクヤシC. mitis Lour.はマレーシア、ミャンマー(ビルマ)に生育し、幹は根元から分枝し、開花樹齢に達しても全体が枯れることはない。
クジャクヤシ属は熱帯アジア、ニューギニア、オーストラリアに約27種分布し、葉形によって分類され、単幹のものには巨大な葉をつけるものもある。単幹と叢生(そうせい)があり、高さは普通7.5メートルであるが、単幹のほうが幹も葉もはるかに大きい。室内装飾用とされ、0℃以上に保つ。
[佐竹利彦 2019年4月16日]