日本大百科全書(ニッポニカ) 「クストー」の意味・わかりやすい解説
クストー
くすとー
Jacques-Yves Cousteau
(1910―1997)
フランスの海洋・海中探検家。ボルドー近郊に生まれ、1930年ブレストの海軍兵学校を卒業。第二次世界大戦前から海軍で潜水技術の研究・開発に従事し、1943年ガニャンEmile Gagnan(1900―1979)と共同で水中肺(SCUBA(スキューバ):self-contained underwater breathing apparatus、商標名アクアラングAqua-lung)を発明した。圧縮空気を利用した簡便な水中作業用具水中肺は、海洋開発、レジャーに新生面を開いた。1948年A・ピカールとバチスカーフの試験、海中円盤の製作とそれによる海中調査、1951~1952年カリプソ号での紅海海洋調査、1967~1970年には同じカリプソ号で世界各地の海洋探検を行った。また、1953年に出版した『沈黙の世界』La monde du silenceを1956年に映画化、これは海中・海底の芸術性高い記録映画として評価され、カンヌ映画祭でグランプリ、アメリカのアカデミー最優秀長編記録映画賞を受けた。1964年の『太陽のとどかぬ世界』Espace sans lumièreもアカデミー賞などを受賞、テレビの連続科学番組にも進出した。さらに大陸棚開発、海中生活、海洋汚染防止など活動分野は広い。1957年海軍少佐で退役し、モナコ海洋博物館所長、フランス海洋開発センター所長を務めた。主著に『沈黙の世界』(1953)、フィリップ・ディオレPhilippe Diolé(1908―1977)との共著『大いなる海の覇者』(1971)などがある。
[半澤正男]
『佐々木忠義訳『沈黙の世界』(『世界ノンフィクション全集44』所収・1963/『沈黙の世界/大西洋ひとりぼっち/漂流五十日』所収・1978・筑摩書房)』▽『森珠樹訳『クストー海洋探検シリーズ3 大いなる海の覇者』(1973・主婦と生活社)』