クラッド板(読み)クラッドばん(その他表記)clad plate

改訂新版 世界大百科事典 「クラッド板」の意味・わかりやすい解説

クラッド板 (クラッドばん)
clad plate

異種金属全面にわたって接合し,両者の性質を利用するように作られた板材。被せ金(きせがね)ともいう。片面クラッドの二層,または両面クラッドの三層複合材料として用いられ,特殊用途には異なった材料を順次重ね合わせた多層板も作られる。19世紀後半にはすでに,軟らかい靱性(じんせい)のある低炭素鋼と硬い焼入れ性のよい高炭素鋼とのはり合せ材ですき(鋤)やくわ(鍬)を作った歴史がある。温度調節用の接点として多用されているバイメタルも,熱膨張率の異なる2種の合金をはり合わせたクラッド板である。クラッド板は,めっきなどの表面析出膜とは異なり,薄板のはり合せで作られるので表面層にピンホール(小孔)がなく,化学装置材料などにも使用できる。特殊な化学装置材料の例としては,銅板チタン板をクラッドした電解槽電極材料がある。チタンは,高酸化性雰囲気での耐食性に優れるが,電気抵抗が大きく高価なため電極材料に適さない。より安価で電気の良導体である銅板とのクラッドが両者の特色を生かした複合材料を生み出す。炭素鋼板の表面にクラッドされる金属としては,ステンレス鋼,ニッケル,銅,インコネルニッケル合金一種),モネル(同),チタンなどがある。

 製造法としては両者を重ねて圧延する方法が基本であるが,両者の接着のために技術的工夫が払われている。近年発明された爆発圧着法(爆発成形)はクラッド板の組合せの可能性を拡大した。異種金属であっても,もし裸の状態で接触すれば金属どうしは強く接合できるが,通常は表面に酸化物層,吸着ガス層などがあり,接合は妨げられる。爆発圧着では,互いに高速で衝突するときに表面の酸化物層などが破壊され,新鮮で活性な面どうしの接触が可能になる。鋼板に鉛板を密着させるにはホモゲン(〈均一な被覆homogeneous coating〉から出た日本での慣用語)と呼ばれる技術がある。鉛と鉄の密着性をよくするために鉛とスズ合金めっきを中間に施す方法であり,鉛ホモゲン被覆と呼ばれる。金属層による被覆方法としては,ほかに溶射による方法がある。
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百科事典マイペディア 「クラッド板」の意味・わかりやすい解説

クラッド板【クラッドばん】

異種の金属を全面にわたってはり合わせた板材。片面のみをクラッドcladとした2層,両面ともクラッドにした3層複合材料などがある。熱膨張率の異なる2種類の金属片を重ねたバイメタルもクラッド板の一種。製造法は,両金属を重ね合わせて圧延するのが基本であるが,金属どうしを高速で衝突させ表面の酸化物層などを破壊させて接合する爆発圧着法も発明されている。

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