改訂新版 世界大百科事典 「クリシャンチャンダル」の意味・わかりやすい解説
クリシャン・チャンダル
Kriśan Candar
生没年:1914-77
インドのウルドゥー文学界でプレームチャンド以来の最も注目すべき作家の一人。パンジャーブのワジーラーバードで生まれ,少年期をカシミールで過ごした。ラホールで英文学,法律学を修めた彼は23歳の頃から本格的に小説を書き始めた。進歩主義作家と規定される彼の執筆活動は,初期のロマン主義的傾向を経て1947年のインド・パキスタン分離独立時の騒乱に直面し,政治思想や社会体制,宗教や伝統に対する批判を主題とする作品に集中し,短編集《われわれは野蛮人だHam Vaśśī Hain》(1947)のような衝撃的作品を生んだ。その後,大都会の片隅に住む被抑圧階級の描写に本領を発揮した彼は,軽妙な風刺小説でも人気を集めた。代表作として長編《敗北》(1939)などがあるが,晩年は乱作に陥った。ヒンディー語はもとより日本をはじめ英,露,中,東欧諸語などに翻訳された作品は,インド,パキスタンだけでなく海外でも広く読まれている。
執筆者:鈴木 斌
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報