日本大百科全書(ニッポニカ) 「クレンネル鉱」の意味・わかりやすい解説
クレンネル鉱
くれんねるこう
krennerite
テルル化金・銀(化学式(Au,Ag)Te2)の鉱物。コストフ鉱kostovite(CuAuTe4)の金(Au)置換体に相当するが、つねに少量の銀(Ag)を必須(ひっす)成分として含み、(Au,Ag)Te2と与えられる。AuとAgの比率は4:1~3:1程度。純粋のAuTe2はカラベラス鉱として別構造である。現在はこれらが総括されてコストフ鉱‐シルバニア鉱群となっているが、コストフ鉱‐クレンネル鉱系とカラベラス鉱‐シルバニア鉱系に2分割したほうが現状により適合している。自形は短柱状。
浅~深熱水性金・銀・テルル鉱床中に産する。日本では青森県むつ市恐山(おそれざん)の小規模な鉱化作用の産物中にみられる。共存鉱物はカラベラス鉱、テルル水銀鉱、シルバニア鉱、ペッツ鉱、ヘッス鉱、自然テルル、自然金など。同定は自形が出ていれば、どこが結晶軸かわからないような斜方(直方)柱による。伸びの方向を切る劈開(へきかい)をもつ。色が銀白に見える結晶面とやや真鍮(しんちゅう)色を帯びる結晶面がある。ただし多くの場合、結晶面は現れず、微粒なので、面によって反射色の違いが生ずることによる同定法は使えない。命名はハンガリーの鉱物学者ヨセフ・A・クレンネルJoseph A. Krenner(1839―1920)にちなむ。
[加藤 昭 2016年8月19日]