日本大百科全書(ニッポニカ) 「テルル水銀鉱」の意味・わかりやすい解説
テルル水銀鉱
てるるすいぎんこう
coloradoite
テルル化水銀の鉱物。閃亜鉛鉱(せんあえんこう)と同構造。閃亜鉛鉱系鉱物の一員。英名をそのまま片仮名に直したコロラド鉱という和名もある。自形未報告。熱水鉱脈型金・銀鉱床中に産し、また火山噴気性ヒ素鉱床に伴われることもある。日本では、前者の例として、山口県下関(しものせき)市阿川(あがわ)鉱山(閉山)の熱水鉱脈型金・銀鉱床から、後者の例として、青森県むつ市恐山(おそれざん)の火山噴気変質物中から確認されている。
共存鉱物は黄鉄鉱、閃亜鉛鉱、黄銅鉱、方鉛鉱、磁硫鉄鉱、砒(ひ)四面銅鉱‐安四面銅鉱、自然金など、非常に広く産する硫化物・硫塩鉱物がある場合と、ペッツ鉱、テルル鉛鉱、カラベラス鉱、クレンネル鉱などテルル化物に富む場合とがある。いずれの場合も脈石鉱物は石英が主である。同定は粒状で独立した産出例に乏しく、肉眼的な特徴は確立されていない。同系の鉱物では構成成分元素の原子量が大きいものほど比重が大きいのが通例であるが、セレン化水銀の鉱物ティーマン鉱tiemannite(化学式HgSe)の比重は8.24で明らかに本鉱の8.09より大きい。英名は複数の原産地が存在するアメリカ、コロラド州にちなむ。
[加藤 昭 2017年12月12日]