日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペッツ鉱」の意味・わかりやすい解説
ペッツ鉱
ぺっつこう
petzite
金、銀の複テルル化物。同構造のセレン置換体フィシェサー鉱fischesserite(化学式Ag3AuSe2)などとともにペッツ鉱群を形成する。自形は未報告。浅~深熱水性金・銀鉱脈型鉱床中に産し、金・銀の鉱石鉱物となる。日本では浅熱水性のものでは北海道札幌(さっぽろ)市小別沢(こべつざわ)鉱山(閉山)、深熱水性のものでは岩手県気仙(けせん)郡住田(すみた)町野尻(のじり)鉱山(閉山)から報告されている。
共存鉱物は、ヘッス鉱、シルバニア鉱、カラベラス鉱、モンブレイ鉱montbrayite(Au2Te3)、テルル鉛鉱、クレンネル鉱、メロネス鉱melonite(NiTe2)、硫テルル蒼鉛(そうえん)鉱、黄鉄鉱などである。肉眼的に認められる大きさの粒がまれであるため、観察同定上参考にできる情報がそろっていない。命名は最初にこれを化学分析したハンガリーの鉱物学者ペッツKarl Wilhelm Petz(1811―1873)にちなむ。
[加藤 昭 2018年7月20日]