二クロム酸カリウムK2Cr2O7または二クロム酸ナトリウムNa2Cr2O7の飽和水溶液と濃硫酸との混合溶液をいう。古くから化学実験室でのガラス器具洗浄剤としてよく用いられてきた。各種ガラス器具(ピペット,ビュレット,フラスコなど)をこの液に1昼夜程度つけておき,水でゆすぐと,水や酸などではとれない有機物などによる汚れがよく落ちる。しかし6価クロムを含む酸性溶液なので,そのまま下水道に流すことは禁じられている。二クロム酸カリウムを用いるのはベックマンBeckmann混液,二クロム酸ナトリウムを用いるのはキリアニKiliani混液ということもある。いずれも,きわめて酸化力が強く,手や衣服などに付着させないよう注意しなくてはならない。
ベックマン混液=K2Cr2O760gを濃硫酸80g,水270gと混合する。キリアニ混液=Na2Cr2O7・2H2O60gを上記のカリウム塩のかわりに用いる。
執筆者:中原 勝儼
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
二クロム酸カリウムの飽和溶液と濃硫酸(試薬はいずれも工業用でよい)との混合溶液をいう。主としてガラス容器の汚れを取り除くために用いる洗浄液でクリーニング溶液ともいう。
溶液中に生じている酸化クロム(Ⅵ)またはポリクロム酸イオンが酸性溶液中で酸化作用をもつので、ガラス器具類に付着した有機物の汚れを酸化分解し、器具を清浄にする働きを示す。小形の器具類はこの液を入れた洗浄槽中につけ、大形のものや容量分析に用いる測容器類はこの液を満たして、一夜放置する。清浄にしたガラス器具類はよく水洗し、最後に蒸留水で洗浄し、必要ならば乾燥して使用する。この洗浄液は何回も使えるので、使用のつど洗浄槽に戻す。長期間の使用によってクロム(Ⅲ)塩が緑色を帯びてきたら効力がないので、新しくつくりかえる。
この液は有機物を酸化分解する作用が強いから、手とか実験衣類につけないように十分注意する。もし誤って衣服類に洗浄液がついたら、多量の水で洗い流し、炭酸ナトリウムなどで中和しておく。硫酸は揮発性が小さいので乾燥すると衣類に穴があくことがある。なおクロム(Ⅵ)化合物(六価クロム)は有害で、下水道の排水基準が厳しいので、廃液を下水に流してはいけない。クロム酸混液は洗浄力が強い利点があるが、このようにいくつかの欠点があるので、最近は表面活性剤を基剤とする洗浄液が用いられるようになっている。
[成澤芳男]
二クロム酸カリウム,または二クロム酸ナトリウム,酸化クロム(Ⅵ)の水溶液と濃硫酸との混合物.強い酸化力があり,理化学用ガラス器具の洗浄,とくに有機物による汚れの除去に利用される.液ははじめ赤橙色であるが,使用するにつれて,CrⅢを生じて赤褐色になり,さらに緑色に近づく.CrⅥの毒性と硫酸の腐食性という問題点があるため,現在ではほかの界面活性洗剤にとってかわられて使用は減っている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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