改訂新版 世界大百科事典 「クーラン」の意味・わかりやすい解説
クーラン
kulan
Equus hemionus kulan
アジアノロバの1亜種。体色は四肢を含めて黄茶色。背中の線に沿って狭い淡色の帯がある。後頭部が長く,目が相対的に下方に位置するのが特徴。最小の亜種の一つで,肩高130cm以下。かつてはアラル海,カスピ海,黒海沿岸の砂漠やステップに広く分布していたものと思われるが,急激に個体数が減少し,1900年代に入るころには現在のカザフスタン共和国とトルクメニスタン共和国の地域に生き残るのみとなり,19年以来保護されている。しかし,前者は35年から36年にかけての大雪のために絶滅した。後者は50年代に150頭まで減少したが,その後回復し70年代に入って約700頭で安定している。種々の草を食べ,粗食に耐え,水に対する要求度も低いが,2,3日に一度は水を飲むことが必要で,人に水場を奪われたことがもっとも大きな個体数減少の原因となっている。イラン,アフガニスタンなどに生息するアジアノロバの亜種オナジャーとは厳密には区別できず,同一の亜種に含まれるのではないかともいわれる。
→ロバ
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報