日本大百科全書(ニッポニカ) 「グルベル」の意味・わかりやすい解説
グルベル
ぐるべる
Cato Maximilian Guldberg
(1836―1902)
ノルウェーの化学者、数学者。クリスティアニア(現在のオスロ)に生まれる。1859年大学卒業後、クリスティアニアの中等学校教師、続いて王立軍事アカデミーの数学教師となる。1861年に奨学金を受けてフランス、スイス、ドイツに留学した。1869年からクリスティアニア大学の応用数学教授を務めた。義弟の実験家ボーゲと協力して化学親和力の研究を進め、物理化学の基礎法則である質量作用の法則を1864年に発表した。初めこの発表は外国の科学者にはほとんど知られなかったが、10年以上のちにオストワルトにより実証され、またファント・ホッフがまったく別に同法則を導き、一般に認められた。分子運動論の見地から気体、液体、固体の状態方程式を研究し、1867年にはファント・ホッフに先だって理想気体の状態方程式を提出した。この研究は晩年に至るまで続けられ、他方、合金や塩類の溶融状態も研究し、合金の融点、熱の仕事当量などの論文を発表。その後、大気の運動に関する気象学の基礎的研究を発表するなど、多岐にわたる研究活動の一方、社会的活動にも貢献。クリスティアニアの工芸協会長、同科学アカデミー院長を務め、多くの実際的問題で大衆啓蒙(けいもう)に努力した。1870年には王立ノルウェー科学協会委員に推され、ノルウェーがスカンジナビア諸国に先んじてメートル法を採用するに際しても重要な役割を果たした。これらの活動により、多くの勲章を受け、ノルウェーの国民的科学者の一人である。
[後藤忠俊]