改訂新版 世界大百科事典 「ケイリン」の意味・わかりやすい解説
ケイリン
David Keilin
生没年:1887-1963
イギリスの生物学者。モスクワ生れ。両親はポーランド人。ワルシャワからリエージュを経てパリに学び,昆虫(双翅(そうし)類)を研究した。1915年にケンブリッジに渡り,比較生化学などで開拓的な研究のあるヌタールG.H.F.Nuttallに師事。ケイリンの業績としては,細胞呼吸におけるチトクロムの意味づけ(1925)が特に有名だが,この生化学的発見もウマバエ幼虫の観察を発端としていた。マックマンC.A.MacMunnが古く1880年代にこの呼吸色素タンパク質を別の名で発見していたこともケイリンは発掘して,自己の業績を“再発見”と位置づけた。1934年から没するまで,雑誌《寄生虫学Parasitology》の編集にもたずさわった。遺稿《細胞呼吸とチトクロムの歴史》(1966)は,子息ジョアンにより刊行された。
執筆者:長野 敬
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報