日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケッセル」の意味・わかりやすい解説
ケッセル
けっせる
Joseph Kessel
(1898―1979)
フランスの小説家。ユダヤ系ロシア人としてアルゼンチンに生まれる。ロシア、フランス両国で教育を受けてジャーナリストとなる。第一次世界大戦中は航空士官、その後シベリア踏査などに参加。以後世界各地の大事件をルポルタージュする。その体験から『赤い草原』(1922)、『搭乗員』(1923)を書いて認められ、またスペイン内乱、抗独レジスタンス体験から、『影の軍隊』(1946)、両大戦間期の壮大なパノラマ『幸福の後に来るもの』(1950)、イスラエル建国の物語『愛と火の大地』(1961)、アフガン戦士の冒険『騎兵』(1968)などを書いた。つねに激動のなかに身を置いて冒険の精神を生きた著者の作品は、いずれも世界のリアルな描写のうちに、行動に輝く生命を表現している。また人妻の売春を主題に特異な心理を描く『昼顔』(1928)、人と動物の心を描く『ライオン』(1958)などを含め、多産な創作活動を示した。アカデミー・フランセーズ会員。
[小林 茂]
『堀口大学訳『昼顔』(新潮文庫)』