日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケナン」の意味・わかりやすい解説
ケナン
けなん
George Frost Kennan
(1904―2005)
アメリカの外交官、外交評論家。ミルウォーキー生まれ。1925年プリンストン大学卒業。1926年に国務省入省、職業外交官としておもにソ連・東欧関係の職務を歴任。1933年に初代駐ソ大使ブリットとともにモスクワに赴任し、以後二等書記官、公使として何度かソ連に駐在した。1947年初代の国務省政策企画部長。同年7月外交評論誌『フォーリン・アフェアーズ』誌に匿名で発表した、いわゆる「X論文」(「ソ連の行動の源泉」)では、ソ連の内政の自由抑圧性と、対外膨張性を強調し、現実主義的対応としての「封じ込め」を提唱した。この主張はアメリカ国内の反ソ派を力づけ、対ソ強硬政策に理論的背景を提供することとなった。1952年5月駐ソ大使となったが、同年10月ソ連政府の退去要求で辞任。退官後はプリンストン高等研究所などでソ連研究や外交史の研究を深めた。1961~1963年駐ユーゴスラビア大使。ベトナム戦争に際しては米軍の早期撤兵を主張。レーガン政権の核軍拡による対ソ強硬政策などを批判した。冷戦終結後も、核兵器の削減や地球環境の危機への取り組みの重要性を強調、また晩年の2002年にもブッシュ政権の対外政策を批判するなど、活発な評論活動を続けた。
[遠藤雅己・村松泰雄]
『奥畑稔訳『ジョージ・ケナン回顧録』(1973・読売新聞社)』▽『ケナン著、佐々木坦・佐々木文子訳『核の迷妄』(1984・社会思想社)』▽『ケナン著、近藤晋一・飯田藤次他訳『アメリカ外交50年』(岩波現代文庫)』