ミルウォーキー(読み)みるうぉーきー(英語表記)Milwaukee

翻訳|Milwaukee

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミルウォーキー」の意味・わかりやすい解説

ミルウォーキー
みるうぉーきー
Milwaukee

アメリカ合衆国、ウィスコンシン州南東部、ミシガン湖西岸に位置する同州の最大都市。人口59万6974(2000)。市名は先住民(アメリカ・インディアン)のことばで「美しい土地」を意味する。重要な湖港の一つで、石炭石油などの原料を扱い、セント・ローレンス水路の完成後は港湾設備も完備し、外国貨物船の出入りも多く、活気に満ちている。「アメリカの機械工場」と別称され、合衆国有数の工業都市として名を馳(は)せており、工業生産高15位、労働人口の30%が工業に従事する。ミシガン湖岸域とミシガン湖に注ぐメノミニーなど、3河川流域を中心に大きな工業分布がみられ、そのうちでも機械工業が第1位を占める。ディーゼルやガソリンエンジンをはじめ、トラクターモーターサイクル、船外モーターや建設機械、電気器具、バッテリーなどが生産され、食品加工や印刷・出版業なども盛んである。また、合衆国第一の「ビールの町」として親しまれてきたビール製造もいまなお健在ではあるが、最近はその王座を明け渡し、ビール製造に従事する労働人口も全体の1%余りに減少している。そのほか穀物、とくに小麦の市場・集散地としても知られる。17世紀ごろから先住民の居住地にフランス人の探検隊が入り、しばらくの間、先住民との毛皮交易のためにフランス系カナダ人が現れるようになった。1818年にノース・ウェスト会社のS・ジュノーがここに町を開き、46年より市制が施行された。1840年ごろからドイツオランダポーランドなどヨーロッパからの移民で人口が急増し、50年から90年までの40年間に5倍に膨れ上がった。とくにドイツ人は際だって多く、市の政治・経済・社会に大きな影響を与え、ドイツ的気質がいまも市の性格として受け継がれている。文化・教育についても、マーケット大学(1881創立)やウィスコンシン大学ミルウォーキー校(1956)、ウィスコンシン医科大学など多くの優秀な大学を配し、ミルウォーキー交響楽団やバレエ、多くの市民文化活動を支える近代的な舞台・芸術センター、ミルウォーキー芸術センター、市立博物館などの施設も多い。とくにスポーツは市民の間に深く根を下ろしており、プロ野球(大リーグ)のブリュワーズやプロバスケットボール(NBA)のバックスの試合に市民は熱狂し、サッカーやポロ、野球はもちろん、テニス、ゴルフなど多くの運動施設が整い、公園、キャンプ場などのレクリエーション施設も多い。ミシガン湖の湖岸通りは美しい場所として有名である。

[作野和世]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミルウォーキー」の意味・わかりやすい解説

ミルウォーキー
Milwaukee

アメリカ合衆国,ウィスコンシン州最大の都市。ミシガン湖の西岸,ミルウォーキー川の河口にある。 17世紀後半からフランス系の宣教師や毛皮商人が訪れ,1795年北西会社が交易所を設立,1818年から定住が始った。 1830~40年代にはドイツからの移民が多かった。 46年に市に昇格。初めは穀物や小麦粉の積出港として発展。南北戦争後は次第に工業が発達し,現在は合衆国有数の工業中心地に成長。五大湖,セントローレンス水路の重要港で,穀物,石炭の積出しが多い。商業,金融の中心地であり,電気,建設,鉱山および一般産業用機械などの工業が卓越し,ビール醸造,製靴,精肉などの工業も盛ん。特にビール醸造は 1840年に始り,世界的に有名。インディアンの先史時代の遺物を多く保存する博物館,美術館,マルケット大学,ウィスコンシン大学ミルウォーキー校をはじめ各種高等教育機関などがある。人口 59万4833(2010)。

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