1940年代末期のアメリカの対ソ外交政策。提唱者は国務省政策企画部長ジョージ・ケナン。ケナンは1947年『フォーリン・アフェアーズ』誌7月号に匿名で「ソ連の行動の源泉」と題する論文を発表。世界的な規模でソ連の周辺国に対し経済的・軍事的援助を与えれば、ソ連の進出を阻止することができるとした。事実、1940年代末期のアメリカの対ソ外交政策はほぼこの方針の下に実施され、1947年3月のトルーマン・ドクトリン、同6月のマーシャル・プラン、1949年の北大西洋条約機構(NATO(ナトー))の設立など一連の経済・軍事援助政策の展開となった。しかし1949年のソ連の原爆保有、1950年の朝鮮戦争の勃発(ぼっぱつ)などは「封じ込め政策」立案者の予想を裏切る結果となり、1950年代に入ってアメリカの対ソ政策は、より強硬な「巻返し政策」「大量報復政策」「瀬戸際政策」などといわれたダレス強硬外交へ転じた。
[藤村瞬一]
第2次大戦後のアメリカの冷戦政策。国務省政策企画局長G.F.ケナンが《フォーリン・アフェアーズ》誌(1947年7月号)に〈ソ連の行動の源泉〉と題して発表したいわゆる〈X論文〉,および前年2月ケナンがモスクワから発した長文の電報の中で明らかにされた。ソ連はロシア的なナショナリズムと共産主義を心理的源泉として,あらゆる手段を用いて勢力拡大をはかるが,同時に力の論理にはきわめて敏感であるから,アメリカはソ連の周辺地域に経済・軍事援助を与え,ソ連の勢力膨張を長期にわたって封じ込め,ソ連の内部崩壊を生じさせるべきだとする政策。現実には,すでに1946年ころからトルーマン政権は,対外的には力によるソ連勢力拡張阻止,国内的には反共体制強化,アメリカ的信条への動員を進めており,47年3月のトルーマン・ドクトリン,6月のマーシャル・プラン発表,49年4月のNATO設立をはじめとするグローバルな安全保障体制および基地網の建設などにより,対ソ封じ込めは戦後アメリカ外交の基本原理となった。しかし封じ込め政策に対しては,アメリカはヨーロッパの紛争に巻き込まれるべきでないとする孤立主義的見解に立った批判や,その消極性に対する批判があった。52年,J.F.ダレスは封じ込めに代わるものとしてより積極的にソ連周辺の社会主義国家をもソ連の勢力範囲から〈解放〉していこうという,〈巻き返し政策roll-back policy〉を提唱した。封じ込め政策は60年代,ケネディ政権によって対中国政策の基本とされた。
執筆者:進藤 栄一
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第二次世界大戦後まもなく始まった冷戦の時代に,アメリカがソ連の勢力拡張を阻むためにとった政策をいう。1947年夏に国務省のケナンが雑誌論文で最初にこの言葉を用いたことで一般に広まったが,すでに同年3月のトルーマン・ドクトリンが封じ込めの第一弾であった。初期の経済的な手段を重視し,地域的には西欧と東アジアを中心とする限定的なものから,やがて軍事的でグローバルな政策へと変容した。50~60年代の中国にも適用された。89年5月にブッシュ大統領が「封じ込めを越えて」,ソ連を国際社会に統合すると宣言。冷戦の終結とともに対ソ封じ込めも終了した。80年代の日本の経済的膨張,90年代後半の急速な中国の強大化に際し,封じ込めという言葉を使って対策を提案する識者がいた。
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…ドル平価切下げ政策に反対し5ヵ月で辞任したが,41年国務次官補として再び公職に復帰した。その後国務次官(1945‐47),国務長官として,トルーマン・ドクトリンやマーシャル・プランの立案に関与し,また北大西洋条約機構(NATO)設立に携わるなど,〈封じ込め政策〉の推進者として活躍した。しかし中国革命の成功によってトルーマン政権の責任が問われた際,J.R.マッカーシーらの対国務省攻撃の矢面に立たされた。…
…これに対してソ連は参加拒否の態度をとり,9月にはコミンフォルムを創設しそれに対抗した。このアメリカの戦略は〈封じ込め政策containment policy〉といわれるが,その起案者ケナンの意図とは異なり,しだいに軍事的な対抗という側面を強化していくことになる。一方この間,ソ連も東欧での支配の強化に努め,ソ連の指導下にある共産党支配の政府を樹立しようとしていた。…
※「封じ込め政策」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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