ケルチ(読み)けるち(英語表記)Керчь/Kerch'

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケルチ」の意味・わかりやすい解説

ケルチ
けるち
Керчь/Kerch'

ウクライナ南部、クリミア地方の港湾都市。人口15万7000(2001)。クリミア半島の東にのびるケルチ半島東端にあり、アゾフ海と黒海を結ぶケルチ海峡に面する。海峡対岸のタマン半島カフカス駅との間に鉄道連絡船が通じる。市域内に旧ソ連地域有数のカミシ・ブルン鉄鉱山があり、その採掘、選鉱、冶金(やきん)が行われるほか、造船、水産加工などの工場がある。鉄鉱山の鉱石は主として褐鉄鉱で、品位35~40%、すべて露天掘りで採掘される。鉱石はケルチで製錬されるほか、アゾフ海北岸のマリウポリへも輸送されて製錬される。市は紀元前6世紀より知られ、古代ギリシア人はパンティカパエウムPanticapaeumとよんだ。第二次世界大戦初期の1942年にドイツ軍との間に激しい攻防戦があり、勇敢な戦いがたたえられてソ連の英雄都市の称号を得た。歴史考古博物館、劇場などがある。

渡辺一夫

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ケルチ」の意味・わかりやすい解説

ケルチ
Kerch'

ウクライナ南部,クルイム自治共和国の都市。クリミア半島(クルイム半島)東端の港湾都市。起源は前6世紀頃で,古代にはギリシア植民市パンチカパイオンとして知られていた。前5世紀にボスポロス王国の首都とされ,アゾフ海一帯を制圧したが,のちローマに従属。 13世紀にはタタール人により攻略され,1318年ジェノバ領,15世紀にトルコ領となり衰微。 1774年にロシア領。 19世紀末,地元の鉄鉱床の開発により発展。クリミア戦争,第2次世界大戦では大きな破壊を受けた。主産業は鉄鉱石採掘のほか,石炭化学,肥料,水産加工,造船,船舶修理などの工業である。港はケルチ海峡にのぞみ,対岸と鉄道連絡船で結ばれる。港からは鉄鉱石を大量にドンバス (ドネツ炭田) に移出漁港もある。周辺は史跡に富み,ローマ時代のカタコンベ,古代の墳墓 (クルガン) が多数分布し,歴史・考古学博物館がある。観光開発にも力を入れている。人口 17万 8300 (1991推計) 。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android