改訂新版 世界大百科事典 「クルガン」の意味・わかりやすい解説
クルガン
kurgan
チュルク語に由来するロシア語で,石や土で墳丘を盛りあげた高塚状の墳墓をいう。この種の墳墓は広く北方ユーラシアや中央アジアに分布しており,しばしば群をなしている。年代はきわめてさまざまで,古いものでは青銅器時代のものから新しいものでは中世の墳墓まであり,同一墳丘に後世の埋葬が営まれていることもある。南ロシアのクルガンはほとんどが土塚であるが,アルタイや中央アジアでは積石塚もある。内部構造は時代と民族によって大きく異なる。南ロシア草原のクルガンを例にとれば,青銅器時代(前3千年紀)の竪穴墳文化では墳丘基底下の竪穴土壙,地下式横穴墳文化(前2千年紀前半)では墳丘基底下の地山にうがたれた地下の墓室(カタコンベ)に埋葬がなされ,また初期鉄器時代の木槨墳文化(前2千年紀後半~前9世紀初め)のクルガンは木槨が埋葬主体となっている。スキタイのクルガンは,初期のものや森林ステップ地帯のものは,北方ユーラシアの同時期の墳墓のように木槨墓が多く,スキタイ最盛期の王陵は地下式横穴で,ときに石造墓室を有する。スキタイ時代のクルガンは人馬の殉葬を伴うことがあり,19世紀以降の発掘調査でおびただしい金銀製の副葬品を出土したことで世に知られている。馬の殉葬は中世まで存続している。シベリアのクルガンにはパジリク古墳群のように墓室が凍結保存されている例がある。
執筆者:穴沢 咊光
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報