ゲノム医療(読み)げのむいりょう(その他表記)genomic medicine

翻訳|genomic medicine

共同通信ニュース用語解説 「ゲノム医療」の解説

ゲノム医療

人のDNAに書かれたゲノム(全遺伝情報)が2000年にほぼ解読されたことをきっかけに、医療生命科学は目覚ましい進展を遂げた。病気に関わるさまざまな遺伝子の働きが明らかになる一方、遺伝子解析のコストが大幅に低下した。人工知能(AI)も活用することで、個人の遺伝子に合わせた病気の診断や治療、予防が可能になると期待されている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゲノム医療」の意味・わかりやすい解説

ゲノム医療
げのむいりょう
genomic medicine

体をつくるための設計図といえるヒトの遺伝情報を網羅的に調べ、その結果をもとに、より効率的で効果的な疾患の診断・治療・予防を行う医療のこと。一部の難病や遺伝性のがんなど単一の遺伝子が原因となる疾患や、複数の遺伝子が発症背景となるがんや生活習慣病などが対象となる。なお、ゲノムとは遺伝子「gene」と、すべて(総体)を意味する「-ome」を合わせた造語であり、DNAに含まれる遺伝情報全体を意味する。次世代シークエンサー(DNAの塩基配列を自動的かつ高速に解読する装置)の開発により、ヒトの組織を用いて、高速で大量のゲノム情報を短期間で解読することが可能になってきている。

 日本においては、2014年(平成26)7月に閣議決定された「健康・医療戦略」のなかで世界最先端の医療の実現に向けた取り組みとして、ゲノム医療を推進することが初めて明記され、内閣官房健康・医療戦略推進会議のもとに設置された「ゲノム医療実現推進協議会」などにより実現化への具体的な方向性が示されている。

 近年、病気と遺伝情報の関係は急速に明らかになりつつあり、小児期疾患(先天異常などの遺伝性疾患など)、産科疾患(不妊症、出生前診断など)、神経筋疾患筋ジストロフィー、パーキンソン病など)、内分泌代謝疾患(褐色細胞腫(しゅ)、家族性高コレステロール血症など)、循環器疾患(先天性QT延長症候群、肥大型・拡張型心筋症など)などの領域では、すでにゲノム医療が実用化されつつある。

 遺伝に加え環境因子がかかわっている多因子疾患であるがんにおいても、個別の遺伝子変異を検出し、治療効果や副作用のリスクの評価が行われていたが、ゲノム医療の実用化によって、より多くの種類の薬剤の選択が可能になることが期待されている。

[渡邊清高 2020年3月18日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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