日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゲルマン鉱」の意味・わかりやすい解説
ゲルマン鉱
げるまんこう
germanite
ゲルマニウムを主成分とする硫化物の一つ。他の硫化物と密雑な集合を構成するため、化学組成Cu13Fe2Ge2S16という金属過剰の化学組成と結晶学的諸性質が決定されたのは1984年と比較的最近のことである。自形は完全なものは未報告。立方体に復元されるような結晶面の部分的に出たものはある。深熱水性多金属鉱床中に他の硫化物と密雑な集合をなして産し、また一部の黒鉱鉱床からも発見されている。日本では秋田県大館(おおだて)市釈迦内(しゃかない)鉱山(閉山)産のいわゆる半黒鉱中の少量成分として産する。
共存鉱物は、レニエル鉱reniérite(化学式(Cu,Zn)11Fe4(Ge,As)2S16)、黄鉄鉱、閃亜鉛鉱(せんあえんこう)、黄銅鉱、斑銅鉱(はんどうこう)、方輝銅鉱、硫砒銅鉱(りゅうひどうこう)、砒四面銅鉱など。同定は独立粒としての産出例がほとんどないので特徴についての記述は乏しい。一見斑銅鉱に似た帯紅暗灰色。褐色にさびる。レニエル鉱と共存している場合は、この種に磁性があるので識別可能の場合が多く、ゲルマン鉱はこれより赤味のある色調を呈する。命名は元素ゲルマニウムの存在による。
[加藤 昭]