コウヤボウキ(読み)こうやぼうき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コウヤボウキ」の意味・わかりやすい解説

コウヤボウキ
こうやぼうき / 高野箒
[学] Pertya scandens Sch.Bip.

キク科(APG分類:キク科)の落葉低木。高さ0.5~1メートル。茎は灰褐色、細い短毛が密生し、よく分枝する。1年枝につく葉は卵形で互生し、毛が多く、2年枝につく葉は細長く、節から3、4枚が叢生(そうせい)する。9~10月、1年枝の先端に頭状花を開く。花は管状花で白色、花冠は5深裂し、裂片は反り返る。果実には毛が密生し、10~11月に成熟する。東北地方南部以西の本州、四国、九州に広く分布する。本種に類似した別種ナガバノコウヤボウキP. glabrescens Sch.Bip.がある。これは枝葉が無毛で、葉はやや細長く、2年枝に花がつくのでコウヤボウキとは区別される。宮城県以西の本州、四国、九州、対馬(つしま)、および中国に分布する。両種とも枝で箒(ほうき)をつくり、主として酒造りの際に使う。名は、高野山でこの枝から箒をつくるということに由来する。

[林 弥栄 2022年2月18日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コウヤボウキ」の意味・わかりやすい解説

コウヤボウキ(高野箒)
コウヤボウキ
Pertya scandens

キク科の小低木。北海道を除く日本各地の山地に生じ,中国大陸にも分布する。世界的には木本となるキク科は多いが,日本産のものとしては珍しい。高さは 1m前後で細い枝がよく分枝し,ほとんど柄のない卵形の葉をまばらに互生する。葉の長さ2~5cmで3本の葉脈が目立ち,葉縁の鋸歯はまばらで,点のように突出している。9月から 10月に,春に出た新年枝の先端に1個ずつ頭状花をつける。頭状花は多数の鱗状総包片に包まれ,なかに 10花あまりの淡紅色を帯びた白い管状花が集っている。果実 (痩果) には冠毛がある。近縁種に葉が幅狭く,長い頭花をつけるナガバノコウヤボウキ P. glabrescensがある。

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