改訂新版 世界大百科事典 「コチョウラン」の意味・わかりやすい解説
コチョウラン
Phalaenopsis
ファレノプシスの名でよく知られ,切花,鉢花にされるコチョウラン属Phalaenopsisのランの総称。本属は約50種を含み,インド,マレーシア,東南アジアの多湿地帯の樹上に着生する。日本への渡来は明治末期。ほとんど茎は見えない。4~5枚の左右にひろがる広くて舌状の葉があり,基部は短い葉柄になり茎をつつみ,その茎より気根を出す。花茎は葉腋(ようえき)から現れ,直立もしくは斜上し,その先端に花を円錐花序につける。コチョウランP.aphrodite Reichb.f.やそれに似たファレノプシス・アマビリスP.amabilis Bl.の花では,2枚の花弁が幅広いひし形で平開し,チョウが飛び交うように優美な形になり,花色は白色,桃色,淡黄の地色が多く,紫や褐色の斑点を有する。開花は日本では冬から初夏にかけてが多い。
多くの種間交配の園芸品種が育成されているほか,属間雑種も盛んで,ドリティス属Doritisとの間にドリテノプシスDritaenopsisが,レナンテラ属Renantheraとの間にはレナントプシスRenanthopsisができている。
高温多湿を好むので,越冬には15℃はほしい。春から秋までが生育期で,この間に肥培するが弱光を好むので,夏は寒冷紗を二重にかける。
執筆者:江尻 光一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報