日本大百科全書(ニッポニカ) 「コムラサキ」の意味・わかりやすい解説
コムラサキ(落葉低木)
こむらさき / 小紫
[学] Callicarpa dichotoma (Lour.) K.Koch
クマツヅラ科(APG分類:シソ科)の落葉低木で高さ1~1.5メートル。葉は対生し、倒卵状楕円(だえん)形、長さ3~6センチメートルで、両端がとがり、縁(へり)の3分の1以上に鋸歯(きょし)がある。6~7月、葉の付け根からすこし離れて集散花序をつけ、淡紫色の花を開く。果実は小球形、径3~4ミリメートルで10~11月に紫色に熟す。原野や山地の湿地に生え、本州から沖縄県、朝鮮半島、中国に分布する。庭木、挿し花によく用いられる。名は、ムラサキシキブに比べて葉など全体が小さいことによる。また、小式部内侍(こしきぶのないし)に例えられ、コシキブともよばれる。類似のトサムラサキC. shikokiana Makinoは葉が小形で先が尾状に長くとがり、果実は径約2ミリメートルで小さい。
[小林義雄 2021年9月17日]
コムラサキ(チョウ)
こむらさき / 小紫蝶
[学] Apatura metis
昆虫綱鱗翅(りんし)目タテハチョウ科に属するチョウ。北海道より九州まで広く分布。種子島(たねがしま)、屋久島(やくしま)およびそれ以南の南西諸島には分布しない。外国では朝鮮半島、中国、ヨーロッパ南東部に産する。日本のコムラサキは従来一般にヨーロッパに産するアパツラ・イリアApatura iliaの1亜種とされてきたが、近年の研究でそれとは別種A. metisの1亜種とする説が有力である。はねの開張は70ミリメートル内外。はねの地色は茶褐色で橙黄(とうこう)色のバンドがあり、雄の表面は見る方向によって紫色に輝く光沢がある。はねの地色が黒褐色で白色のバンドをもつ遺伝型があり、これをクロコムラサキとよぶ場合も多い。寒冷地では年1回の発生(7~8月)、暖地では多化性で5~10月にわたって出現する。樹液、腐果に飛来するが花にはこない。幼虫の食草は各種のヤナギ、ポプラの類(ヤナギ科植物)。越冬態は幼虫である。
[白水 隆]