コリヤーク族(読み)コリヤークぞく(その他表記)Koryaki

改訂新版 世界大百科事典 「コリヤーク族」の意味・わかりやすい解説

コリヤーク族 (コリヤークぞく)
Koryaki

ロシア連邦のカムチャツカ半島の北半分から大陸部にかけて居住する原住民。人口8900(1989)。コリヤーク語を話し,その大部分が現在コリヤーク自治管区を構成する。ロシア人が入植した17世紀半ばには,すでに生業の上でトナカイ・コリヤーク海岸コリヤーク定住コリヤーク)の別があった。前者はチャフチフChavchyvと自称し,内陸部でトナカイ牧畜を専業とする。後者はニミリンNymylynと自称。海岸に定住し,夏は川でサケやマスを捕って干魚(ユッコラ)をつくり,冬は皮舟(バイダラ,バイダルカ)でアザラシ,クジラなどの海獣猟を行う。特異な屋根の,八角形の竪穴住居に住む。コリヤーク族のトナカイ牧畜の起源については議論が分かれているが,一方の海獣狩猟文化はオホーツク海,ベーリング海地域に広く分布する最も古い海洋適応文化の一環をなし,チュクチ族エスキモー,アメリカ大陸の北太平洋沿岸のインディアンやアムール河口のニブヒ族(ギリヤーク)の文化と深いつながりがある。トナカイ・コリヤーク,海岸コリヤークに共通の要素として,トナカイの毛皮製の衣服イラクサなどの編籠,紐,両親と息子の家族から成る拡大家族を居住や生業の単位とする社会構造,労役婚レビレート婚の習慣,〈獣の主〉の観念祖先崇拝火葬習俗,犬の供犠,ワタリガラスの神話などが挙げられる。ソ連時代にソホーズコルホーズが組織され,コリヤーク族の生活文化はまったく近代化されている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コリヤーク族」の意味・わかりやすい解説

コリャーク族
コリャークぞく
Koryak

シベリア東端部,アナドゥイリ川からカムチャツカ半島中部の山岳タイガ地帯に居住する少数民族。人口約1万。形質的にはモンゴロイドに属し,言語は古シベリア諸語のコリャーク語を話す。言語,習俗などが近隣のチュクチ族ときわめてよく似ている。通常,海コリャークとトナカイ・コリャークに分類され,前者は漁業と海獣の狩猟に従事して定住生活を営み,後者はトナカイの遊牧を行う。婚前の純潔が重んじられ,妻をめとる男性は女性の父のもとで一定期間働いてから結婚するが,離婚は簡単に行われ,その際子供は,男の子は父に,女の子は母に引取られる。宗教はシャーマニズムが盛んであるが,ロシア人との接触の結果,宗教や住居などがロシア化した。

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世界大百科事典(旧版)内のコリヤーク族の言及

【住居】より


[トナカイ遊牧民の天幕ヤランガ]
 ツンドラや森林ツンドラにはトナカイ飼養に専従するいわばトナカイ牧畜が発達した。ネネツ族,ヤクート族の一部,内陸部のチュクチ,コリヤーク族はトナカイ群を追う遊牧生活を送った。その住居はヤランガyarangaと呼ばれる天幕であった。…

【ソビエト連邦】より

…上記のハンティ,マンシ,ネネツもその一部であるが,大部分はツングース語系諸族と旧シベリア諸族(パレオアジアート,古アジア諸族とも呼ばれる)である。前者には西シベリアからオホーツク海沿岸に分布するエベンキ族,アムール川下流,サハリン,沿海州に分布するエベン族,ナナイ族,ウリチ族,ウイルタ族(旧称オロッコ族),オロチ族などの民族が属し,後者にはコリヤーク族,チュクチ族,イテリメン族(旧称カムチャダール族),ニブヒ族(旧称ギリヤーク族),ユカギール族,ケート族などの民族が属する。 インド・ヨーロッパ語族に属する言語をもつ民族には,前記のロシア人,ウクライナ人,白ロシア人(ベラルーシ人)のほかに,バルト海沿岸にリトアニア人とラトビア人,ウクライナの南に,ルーマニア人と言語・文化の面で近いモルダビア(モルドバ)人がいる。…

【ボール】より

…こうしてこの世に月が現れた……。シベリアのコリヤーク族なら,かつてこの世に深い闇が訪れたが,それは悪霊が太陽を隠し,こっそりボールにして遊んでいたためであるという日食神話をもっている。もっとも,ゲームで用いるボールがいつでもどこでも球体であるというのではない。…

※「コリヤーク族」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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