日本大百科全書(ニッポニカ) 「コーヒーノキ」の意味・わかりやすい解説
コーヒーノキ
こーひーのき
coffee
[学] Coffea
アカネ科(APG分類:アカネ科)の常緑樹。エチオピア原産で、嗜好(しこう)飲料のコーヒーをとるため、熱帯の高地で栽培される。代表種はアラビアコーヒーノキC. arabica L.で、高さ3~4.5メートル。葉は対生し、楕円(だえん)形で先はとがり、縁(へり)は波打つ。葉腋(ようえき)に短い花柄を群生し、花冠の先が数片に分かれた白色で芳香のある花を密につける。花は熱帯では年中咲き、温帯では晩夏から秋に咲く。果実は球形ないし楕円形で長さ1~1.5センチメートル、紅色から紫色に熟す。種子は普通は2個入っており、半球形で殻状の外皮(羊皮という)と薄膜状の内皮(銀皮という)とに包まれ、平らな面には1本の深い溝がある。
コーヒーをとる植物はコーヒーノキ属に数種があるが、アラビアコーヒーノキがおもで、コーヒー生産の90%を占める。ロブスタコーヒーノキC. canephora Pierre ex A.Froehner(C. robusta Linden)はコンゴコーヒーノキともいい、コンゴ、ウガンダの原産で、幹も葉も大形である。病害虫に強く、低地の栽培に適している。発芽後2年目から収穫できて収量も多いが、品質はやや劣る。リベリアコーヒーノキC. liberica Hiernは熱帯アフリカ原産で、ロブスタ種よりも大形で樹高15メートルになる。果実も大形で低地の栽培に適するが、病害には弱く、品質は劣る。エキセルサコーヒーノキC. excelsa A.Chev.はサハラ砂漠南方原産で、アラビアコーヒーノキとリベリアコーヒーノキの自然交雑種であるといわれている。
[星川清親 2021年5月21日]
栽培
北緯25度から南緯25度までの熱帯で、年降水量1500ミリメートル以上の地域で栽培される。繁殖は普通は実生(みしょう)によるが、接木(つぎき)や挿木も可能である。実生では播種(はしゅ)後8~10か月で本畑へ定植する。樹間へマメ科のテフロシア(ナンバンクサフジ属)やクロタラリア(タヌキマメ属)などの樹木の種子を播(ま)き、幼樹の庇陰(ひいん)(暑さを避ける)、防風用とする。これらはマザーツリーとよばれ、その枝葉は緑肥にもする。収穫は開花後8、9か月にするが、通常は5年目から始め、20年くらいで更新する。
[星川清親 2021年5月21日]