サンゴ礁にすむ魚類のことをいう。造礁サンゴ類は日光が強くて水が澄み、水温が一年中20℃以下にならない熱帯および亜熱帯によく繁殖する。とくに西太平洋からインド洋、カリブ海の沿岸にはサンゴ礁がよく発達する。日本では熊野灘(なだ)以南の黒潮の影響を受ける水域に局部的にみられる。サンゴ礁海域は水温が高くて安定しているうえ、海底に起伏や割れ目があり、魚類の隠れ場所となる所が多い。また、この水域は餌(えさ)となる海藻類や無脊椎(むせきつい)動物の種類が多いので、単位面積当りの魚類数が多い。代表的な種類は、スズメダイ類、チョウチョウウオ類、ニザダイ類、アイゴ類、ベラ類、ブダイ類、モンガラカワハギ類、フエダイ類、ウツボ類などである。
サンゴ礁水域では、多くの魚類が限られた場所に混在するので、餌やすみ場所をめぐって魚種間の生存競争が激しい。チョウチョウウオ類は体が高くて短いので、狭い空間で方向転換するのに有利であるといわれている。コーラルフィッシュの鮮やかな模様や斑紋(はんもん)は、体の輪郭をぼかし、外敵の注意をそらすのに役だっている。また、目を隠すように横切る帯模様や体の後部にある眼状斑によって、頭部の向きがわかりにくくなり、外敵の攻撃から身を守るのに役だっていると考えられている。サンゴ礁には、クエ類などの大形魚の体表や口内の寄生虫を食べる習性をもつ魚類が多く、掃除魚(クリーニングフィッシュ)とよばれる。なかでもソメワケベラ類はよく知られている。掃除魚は掃除をさせる大形魚に守られるので、両者の間には共生的な関係が保たれている。
コーラルフィッシュには、成長段階や雌雄で色彩がまったく異なる種があり、かつては別種とされていたものが多い。また、雄から雌に性転換する種が多くいる。擬態(ぎたい)をする種は数多く知られている。同じような模様だが数種の幼魚が群がって外敵から身を守る群集型擬態、体の一部を小魚などの餌生物に似せて、それを食べにきた魚を捕らえて食べるルアータイプの攻撃型擬態、有害な魚が無害な魚に擬態する攻撃型擬態、逆に、無害な魚が有害な魚に擬態して身を守るベイツ型擬態などがある。
コーラルフィッシュのなかには食用として漁獲されるものもあるが、魚種や漁獲量は限られている。そのうえ、これらのなかにはシガテラciguateraという毒素をもつものがあり、食べると中毒症状をおこすことがある。しかし、多くの種類が観賞魚として人気があり、水族館のほか一般家庭での飼育も普及している。
[落合 明・尼岡邦夫]
出典 ダイビング情報ポータルサイト『ダイブネット』ダイビング用語集について 情報
…また種類によっては,品種改良も施され,色や形の美しい品種がつくられている。海水魚は,そのほとんどがサンゴ礁に生息するいわゆるコーラルフィッシュcoral fishで,色彩は淡水魚より美しく鮮やかなものが多い。
【愛玩の歴史】
ヨーロッパへ1868年に中国の寧波(ニンポー)駐在のフランス領事のM.シモンが,南中国産のパラダイスフィッシュをパリに持ち帰ったのが始まりで,以来各種の淡水熱帯魚の飼育繁殖が試みられ,19世紀末ころには欧米の家庭で愛玩の対象として普及し始めた。…
※「コーラルフィッシュ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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