改訂新版 世界大百科事典 「ゴマダラチョウ」の意味・わかりやすい解説
ゴマダラチョウ
Hestina japonica
鱗翅目タテハチョウ科の昆虫。中型種で開張は6.5~8cm。夏・秋型の雄は小さく,春型の雌は大きい。北海道南部以南の各地にふつう。平地に多く,緩やかに軽快に飛ぶ。同じエノキを幼虫の食樹とするオオムラサキがすめない市街地にもまれでない。和名は碁斑の意で,つまり翅が黒地に白い丸紋の多いところからきている。おもに4齢幼虫で落葉の間に入って越冬し,年2回,暖地では3回発生し,樹液などに集まる。春型は5月ころ,夏型は7~8月に現れる。秋型は9月に見られるが数は多くない。前翅の斑紋はオオムラサキに類似する。春型,とくに雌の後翅では裏面の白化傾向が著しいが,夏型および秋型では表面とあまり変わらない。近縁種のアカボシゴマダラH.assimilisは,奄美大島の特産で,年数回発生する。ゴマダラチョウよりやや大型で翅も横長,白紋も長い。後翅外縁近くに美しい朱色の眼状紋6個があり,脚には黒地に白い筋がある。これらの特徴はアサギマダラの擬態と解釈されている。幼虫はクワノハエノキを食樹とするが,本土のエノキ,エゾエノキでも飼育は可能である。
執筆者:高倉 忠博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報