家庭医学館 の解説
さいとめがろういるすはいえん【サイトメガロウイルス肺炎】
サイトメガロウイルスというウイルスの感染が原因でおこる肺炎です。
お産や、母乳を授乳するときに、母親からもらうなどして、おとなの90%以上は、サイトメガロウイルスをもっています。
ふつうは体内にいるだけで、まったく健康に影響はないのですが、がんや白血病(はっけつびょう)、エイズにかかったり、臓器移植にともなって免疫(めんえき)が低下すると、体内のサイトメガロウイルスが活性化され、急速に増加して発病します。これを内因性感染(ないいんせいかんせん)といいます。
悪化すると、網膜炎(もうまくえん)、肝炎(かんえん)、肺炎、腸炎(ちょうえん)、脳炎など、全身に感染が広がります。なかでも肺炎は重症で、治療しなければ、90%以上が死亡します。
また、抵抗力の落ちた人に感染症がおこる日和見感染(ひよりみかんせん)では、サイトメガロウイルスが単独で感染症をおこすだけでなく、ニューモシスチス・カリニ(「ニューモシスチス・カリニ肺炎(カリニ肺炎)」)との混合感染もよくみられます。
[症状]
ニューモシスチス・カリニ肺炎と同じで、発熱、たんをともなわないせき、呼吸困難、チアノーゼ(爪(つめ)が紫色になる)が生じます。
これらの症状が、抵抗力の弱まった患者さんに現われたら、ほかの日和見感染をおこす病原体とともに、サイトメガロウイルスの感染も疑います。
[検査と診断]
気管支肺胞洗浄(きかんしはいほうせんじょう)(洗浄後の液にふくまれる微生物を調べる)と肺生検(はいせいけん)(わずかな肺組織をとって顕微鏡で調べる検査)を行なって、サイトメガロウイルスを見つけて診断します。ただし、いつも検査できるとはかぎりませんから、実際にはコラム「サイトメガロウイルス肺炎の検査と診断」のような検査を行なって診断をつけます。
[治療]
基本的には、この肺炎がおこるもとになった、からだの抵抗力を弱めている、がんなどの病気を治療することが重要です。
肺炎をおこした場合は、抗ウイルス薬である抗生物質、ガンシクロビル製剤を使用します。ガンシクロビル製剤は単独で使用するよりも、ガンマグロブリンといっしょに用いるほうが効果的で、とくに重症の患者さんでは併用するのが望ましいとされています。
そのほか、呼吸困難に対しては酸素吸入をしたりします。