改訂新版 世界大百科事典 「サカハチチョウ」の意味・わかりやすい解説
サカハチチョウ (逆八蝶)
Araschnia burejana
鱗翅目タテハチョウ科の昆虫。東アジアの特産。日本全国に産しやや山地性。小型で開張は4~4.5cm,雌は雄よりやや大きく,翅も丸みを帯びる。年2回,暖地では3回の発生。タテハチョウ科には珍しくさなぎで越冬する。春型は翅に赤褐色の部分が発達し,ヒョウモン類,ヒョウモンモドキ類に似た印象を与えるが,夏型は黒褐色の地に太い白帯が走り,イチモンジチョウ的で別種の観がある。和名は夏型の白帯が漢字の八の逆のように見えることに由来する。種小名はロシア極東の地名ブレヤに基づく。雌はコアカソなど,イラクサ科の半陰地性植物の葉裏に卵を柱状に重ねて産み,幼虫も群生する。本種にきわめて近い種のアカマダラA.levanaは北海道にふつう。色彩,斑紋は同様であるが開張は3~4cmで,ひと回り小型である。幼虫はイラクサ類を食草とし,ときに大群が見られるが,これは雌が一時に多数の卵を長い幾本もの卵柱として産むからである。ヨーロッパ大陸に広く分布するが,イギリスには産しない。一時期イギリスに導入されたが,保守的な一自然保護主義者によって絶滅させられた。
執筆者:高倉 忠博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報