日本大百科全書(ニッポニカ) 「サティヤルティ」の意味・わかりやすい解説
サティヤルティ
さてぃやるてぃ
Kailash Satyarthi
(1954― )
インドの人権活動家。国際的な非政府組織「児童労働に反対するグローバル・マーチ(Global March Against Child Labour)」代表。「子供や若者への抑圧と闘い、すべての子供の教育を受ける権利のために奮闘している」功績を評価され、2014年にパキスタンのマララ・ユスフザイとともにノーベル平和賞を受賞した。インド独立の父ガンディーの流れをくむ非暴力主義による人権活動家である。日本ではカイラシュ・サトヤルティ、カイラシュ・サティアルティなどと表記されることもある。
インドのマディヤ・プラデシュ州ビディシャ生まれ。幼少期に学校の門前で靴みがきをする親子をみて、児童労働に疑問をもったと後に述懐している。電気工学を修め、ボパールで大学講師などを務めたが、1980年にボランティア団体「子供を救え運動(BBA:Bachpan Bachao Andolan、英語ではSave the Childhood Movement)」を設立し、安い賃金で奴隷のように働く子供をその境遇から救い出し、飲酒や喫煙などの習慣を改め、規則正しい社会生活を送れるようにする保護運動を始めた。1989年には「南アジア子供奴隷解放連合(SACCS:South Asian Coalition on Child Servitude)」を設立して活動の場を海外へ広げ、1998年には「児童労働に反対するグローバル・マーチ」を率い、活動を世界規模に発展させた。同団体は、これまでに児童労働に従事していた子供約8万人を救い出したとしている。こうした貢献に対し2014年のノーベル平和賞が贈られた。サティヤルティはノーベル平和賞以外に、アメリカのロバート・ケネディ人権賞(1995)、オランダの金旗賞(1998)、ドイツのフリードリヒ・エーベルト財団賞(1999)、アメリカのラウル・ワレンベルク人権賞(2002)など人権保護運動を称える数多くの賞を受けている。
[矢野 武 2015年3月19日]