改訂新版 世界大百科事典 「サバンナヒヒ」の意味・わかりやすい解説
サバンナヒヒ
savannah baboon
霊長目オナガザル科の旧世界ザル。アフリカの乾燥帯に生息するヒヒの総称。ギニアヒヒPapio papio,ドグエラヒヒP.anubis,キイロヒヒP.cynocephalus,チャクマヒヒP.ursinusの4種を指す。サバンナヒヒを一つの種Papio cynocephalusとし,上記4種をその亜種とする説もある。ギニアヒヒは西アフリカのセネガルからギニアにかけて,ドグエラヒヒはサハラ砂漠の南から東アフリカにかけて,キイロヒヒはタンザニアからモザンビークにかけて,チャクマヒヒは南アフリカにそれぞれ分布する。また,タンザニアのキイロヒヒとドグエラヒヒの分布境界付近では,両種の混血群も見られる。鼻口部の突出が顕著で狗頭猿(くとうえん)とも呼ばれる。顔は暗黒色。体毛は粗くやや長く,体色は種によって黄褐色から暗褐色と異なる。頭胴長は雄で約75cm,雌で約60cm。尾長は約50cm。体重は雄で約30kg,雌で約15kgと性差が大きい。おもに植物食であるが,昆虫,爬虫類,ノウサギ,レイヨウの幼獣なども食べる雑食性。ふつう20~50頭程度の複雄群をつくるが,100頭近くに達する群れもいる。雌が一生を自分の生まれた群れで過ごすのに対し,雄は成長すると出自集団を出ていくつかの群れを渡り歩く。
執筆者:古市 剛史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報