ひひ(その他表記)baboon

翻訳|baboon

精選版 日本国語大辞典 「ひひ」の意味・読み・例文・類語

ひひ

  1. 〘 副詞 〙 ( 「と」を伴って用いることもある )
  2. 禽獣類の鳴き声を表わす語。
    1. [初出の実例]「一つの鹿、此の丘に走り登りて鳴きき。其の声は比々といひき」(出典:播磨風土記(715頃)賀古郡)
  3. 笛の音を表わす語。
    1. [初出の実例]「ふゑの音のひひときこゆる」(出典:名語記(1275)六)
  4. 矢、風などが速く動く音を表わす語。
    1. [初出の実例]「かぶら矢いればひひと鳴てとをるやうなぞ」(出典:清原国賢書写本荘子抄(1530)一)
  5. 気味の悪い、または下品な笑い声を表わす語。
    1. [初出の実例]「唯〈略〉嘻々(ヒヒ)と笑ってばかり居た」(出典:思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉七)

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改訂新版 世界大百科事典 「ひひ」の意味・わかりやすい解説

ヒヒ (狒々)
baboon

サハラ砂漠以南のアフリカ大陸と,アラビア半島の南端部に生息する霊長目オナガザル科のヒヒ属PapioゲラダヒヒTheropithecusに属する旧世界ザルの総称バブーンともいう。エチオピアソマリアからアラビア半島にかけてのサバンナに生息するマントヒヒ,マントヒヒよりもさらに高地の,エチオピア高原荒地に生息するゲラダヒヒコンゴ民主共和国西部からナイジェリアにかけての熱帯降雨林に生息するマンドリルおよびドリル,サハラ以南の広大な地域に生息するサバンナヒヒの4群に大別される。このうち,サバンナヒヒはキイロヒヒギニアヒヒ,チャクマヒヒ,ドグエラヒヒの4亜種からなるが,これらを独立した4種として扱う場合もある。ゲラダヒヒは,ヒヒ類の中でもっとも高地の亜高山帯に生息しており,根茎などの堅い食物に適応した歯の形態などにより,他のヒヒ類とは別の属に分けられている。

 ヒヒ類は一般に地上生活者で,植物食を主とする雑食者である。雄と雌の体格差は著しく,雄の体重は雌の2倍近くに達する。体色や形態は種によって大きく異なり,マントヒヒの雄のマント状の長い毛や,マンドリルの雄の極彩色の顔などは特徴的である。ヒヒ類の多くは,他のオナガザル科のサルと同様に,成長した雄が集団を移籍する母系的社会構造をもつが,マントヒヒやゲラダヒヒは,さらに複雑な重層的社会構造を発達させている。ヒヒ類の特徴の一つとして,自然状態でも種間雑種ができやすいという点をあげることができる。エチオピア南部には,ドグエラヒヒとマントヒヒの自然の混血集団が形成されており,人為的交配によれば,多くの種間で繁殖能力をもった雑種をつくり出すことができる。また,アジアからアフリカにかけて生息するマカックMacacaのサルとの間の雑種ができる例も知られている。これらの点は,種分化の過程での性的隔離の問題を考えるうえで重要である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ひひ」の意味・わかりやすい解説

ヒヒ
ひひ / 狒々
baboon

哺乳(ほにゅう)綱霊長目オナガザル科のうち、サハラ砂漠以南のアフリカ全域とアラビア半島の一部に分布するヒヒ属とゲラダヒヒ属に含まれる動物の総称。日本語の狒々は年を経た大きなサルを意味する語で、のちにアフリカ産のヒヒにあてられたものであろう。ヒヒ属Papioのうち、ギニアヒヒP. papio、ドグエラヒヒP. anubis、キイロヒヒP. cynocephalus、チャクマヒヒP. ursinusの4種はサバナ(サバンナ)性で、森林地帯を除く全域を四分して分布し、森林性のマンドリルP. sphinxとドリルP. leucophaeusカメルーンガボン、コンゴの多雨林に、マントヒヒP. hamadryasはエチオピアとアラビア半島の半砂漠に、ゲラダヒヒ属TheropithecusのゲラダヒヒT. geladaはエチオピアの高地草原にすんでいる。サバンナ性の4種を一括してサバンナヒヒとよんで1種P. cynocephalusとする考えや、森林性の2種をマンドリル属Mandrillusとしてヒヒ属から独立させる考え方もある。

 オナガザル科のなかでは大形のサルで、雄は体長70~80センチメートル、体重20~30キログラムに達し、がっしりとした体格をもつが、性差が著しく、雌は小形である。森林性の2種の尾は短く、10センチメートル程度であるが、他は体長の80%程度の尾をもつ。いずれも鼻口部が突出し、独特の顔つきをもつ。地上性の傾向が強く、とくにサバンナ性の種の生態は、初期人類の生活を考える場合重要視される。ヒトの進化において、サバンナへの適応が重要な意味をもつと考えられるからである。またマントヒヒとゲラダヒヒは、基本的社会単位の上位、下位にも集団構造が認められ、ヒト以外の霊長類ではまれな重層社会をもつ点で注目される。

[川中健二]


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普及版 字通 「ひひ」の読み・字形・画数・意味

】ひひ

とざす。〔書、大誥〕(成)王曰く、爾(なんぢ)惟(こ)れ人なり、爾丕(おほ)いに克(よ)くく省みよ。爾(文)王の(かくのごと)くめたるを知れや。天、(ひそ)かに我が功を(たす)けたり。予(われ)敢て(文)王の圖事(とじ)を極め卒(をは)らせずんばあらず。

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】ひひ

もどかしく、いいなやむ。〔論語、述而、憤せずんば啓せず、せずんば発せず、の玄注〕孔子、人と言ふとき、必ず其の人の心、口たるを待ち、乃(しか)る後に發し、爲に之れをく。

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】ひひ

花が美しい。〔楚辞、離騒〕佩、繽(ひんぷん)として其れし として其れ彌(いよいよ)(あき)らかなり

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】ひひ

早くて力あるさま。〔詩、魯頌、(けい)〕(せい)たるり、騏(き)たるり 車を以(もち)ふることたり

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】ひひ

馬の走るさま。

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秕】ひひ

田の雑草。

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轡】ひひ

たづな。

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百科事典マイペディア 「ひひ」の意味・わかりやすい解説

ヒヒ

バブーンとも。霊長目オナガザル科ヒヒ属とゲラダヒヒ属6種の総称。雌雄で大きさが異なり,体長雄70〜90cm,雌50〜65cm,尾は7〜61cm。吻(ふん)が突出し,犬歯が鋭く強大。体色は褐色ないし暗褐色。山地林やサバンナ,岩地に大群ですみ,地上への進出が著しい。果実,昆虫,トカゲなどを食べる。性質は荒く,ヒョウなどとも戦う。ギニアヒヒ(西アフリカ),サバンナヒヒ(サハラ以南のアフリカ),ゲラダヒヒ(中部アフリカ),マントヒヒ,ドリル,マンドリルの6種がある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ひひ」の意味・わかりやすい解説

ヒヒ
Papio; baboon

霊長目オナガザル科ヒヒ属のサルの総称。4種から成る。がんじょうなからだつきで,ことに雄は大きく,体長 70~100cm,雌では 50~65cm。鼻面がイヌのように突き出している。また雄は長い犬歯をもつ。尾は太いが,それほど長くない。地上性で,おもに岩の多い荒れ地やサバナにすみ,リーダーに率いられた群れをつくって生活する。アフリカに分布する。なお,ゲラダヒヒは別属とされている。

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