日本大百科全書(ニッポニカ) 「サビトリ」の意味・わかりやすい解説
サビトリ
さびとり
Savit
古代インドの太陽神の一名称。語源的には、太陽のもつ多くの側面のなかでも「万物への生命力賦与、鼓舞、激励」を意味し、太陽と区別されて「太陽を導くもの」といわれるが、太陽そのものとしても理解されている。毎日、2頭の黄金の馬が引く黄金の馬車に乗って遠方より現れ、定まった空界の道を駆けて行くといわれるが、一方では「太古より存在する穢(けがれ)なき者」とも称せられている。つまり、黄金の両手、両腕を差し伸べては万民に恩寵(おんちょう)を垂れ、黄金の眼(め)をもって万物を見はるかすとともに、光線によって全宇宙を照らし出すサビトリは、災厄や病患を祓(はら)い、悪魔を駆逐する。のみならず、荒野には野獣、森林には馬、厩舎(きゅうしゃ)には家畜というように、万物をしかるべきところに拠(よ)らしめ、神々さえも彼の掟(おきて)に従ってそれぞれの分限を守ったとされる。
彼は朝日として万物を活動に促すだけでなく、夜の太陽として夕暮れにいっさいを安息に導くといわれる。
[原 實]