日本大百科全書(ニッポニカ) 「サビニャック」の意味・わかりやすい解説
サビニャック
さびにゃっく
Raymond Savignac
(1907―2002)
フランスのポスター作家。パリ生まれ。エコール・ラボアジエ卒業後、1935年カッサンドルに出会いその協力者となる。1949年、ベルナール・ビルモBernard Villemot(1911―1989)との二人展の後、石鹸(せっけん)会社のポスター『モンサボン』が注目を集める。自由で伸びやかな線描と一種おかしみを湛(たた)えた奇抜なイメージづくりは、「ビジュアル・スキャンダル」ともよばれ、作家自身は「ショック男」の異名をとるほどであった。一般企業をはじめ、ユニセフ、国立図書館、ポスター美術館のためのポスターを手がけるかたわら、1969年には「コメディ・フランセーズ」が上演したモリエールの『守銭奴』の舞台装置と衣装デザインの仕事もこなしている。
その後、1970年代には目だった活動がみられなかったものの、1980年代に入ると自動車会社シトロエンの仕事を契機としてふたたび旺盛(おうせい)な制作意欲を示し始め、1984年にはサッカーのヨーロッパ選手権決勝大会(パリ)のためのポスター『Euro '84 Final』を制作した。1987年には作品集『サビニャック ポスターのAからZ』が刊行された。また、晩年の2001年9月にはパリのビブリオテク・フォルネイでサビニャック展が開かれ、90歳を過ぎたサビニャック自身も会場に元気な姿を現した。
[村田 宏]