サポナリア(読み)さぽなりあ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サポナリア」の意味・わかりやすい解説

サポナリア
さぽなりあ
[学] Saponaria

ナデシコ科(APG分類:ナデシコ科)の1属名。アジア、ヨーロッパ、北アフリカの原産。代表種のサボンソウS. officinalis L.はヨーロッパ原産の多年草で、おもに花壇用に栽培される。茎は分枝して横にはい、上部は直立して高さ20~90センチメートルになる。葉は対生し、披針(ひしん)形で9~10センチメートル、毛はなく、3本の葉脈が目だつ。6~8月、円筒状の萼(がく)の先に、弁先がへこんだ径4センチメートルの5弁花を円錐(えんすい)状集散花序につける。花色は桃色を帯びた白色。変種として赤色や桃色のものがあり、八重咲き種もある。じょうぶでやせ地でもよく育ち、日当りのよい所でよく繁茂する。繁殖は株分け、実生(みしょう)、挿芽による。根や葉にサポニンやサポナリンを含み、水に浸(つ)けると汁液がせっけんのように泡を出すのでサボンソウの名がある。乾燥した根は去痰(きょたん)薬、体質改善薬に用いる。

 本属には栽培種としてサボンソウのほかにツルコザクラ(ヒメサボンソウ)S. ocymoides L.やS. caespitosa DC.などがある。

[神田敬二 2021年1月21日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サポナリア」の意味・わかりやすい解説

サポナリア
Vaccaria pyramidata; cockle; cow herb

本来はナデシコ科の1属名であるが,園芸的には同じナデシコ科のバッカリア・ピラミダータをさす。以前,本種がサポナリア属に分類されていたため,そのままの名で定着した。ヨーロッパ南部原産の一年草。茎葉は無毛。葉は無柄の心臓形で,対生する。細かく分枝し,茎頂に5弁花を1花ずつつける。花色は淡いピンクで,直径 12mm前後。萼 (がく) の部分はかなりふくれている。カスミソウに似た草姿で草丈は 50cm前後になり,切り花や花壇用に使われる。和名のドウカンソウ (道灌草) は,江戸時代に道灌山薬草園で育てられていたためとされる。秋に種子をまき,日当りと水はけのよい環境で育てる。倒伏しやすいので,早めに支柱を立てるとよい。

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