改訂新版 世界大百科事典 の解説
出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律 (しゅっしのうけいれあずかりきんおよびきんりとうのとりしまりにかんするほうりつ)
〈貸金業等の取締に関する法律〉(1949施行)に代わって1954年に〈出資の受入,預り金及び金利等の取締等に関する法律〉として公布された法律(1983年の改正で法律名が現在のように改められた)。利息制限法は,高利についてその私法上の効果を抑制するものであり,これのみによって高利抑制の目的を達するのは困難なので,別に本法が制定された。〈出資法〉あるいは〈出資取締法〉と略称する。本法は,貸金業者の取締りを主眼とし,あわせて一定の刑罰を加えることによって高利を禁圧しようとする。刑事面における国家の能動的な暴利禁圧立法といえる。本法は,当初,金銭の貸付けを行う者が,年109.5%を超える割合による利息の契約をし,またこれを超える割合による利息を受領したときは,3年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金またはその併科に処する(5条)ものとしていた。しかしその後1983年,〈貸金業の規制等に関する法律〉(〈貸金業〉の項目を参照)が制定されるとともに,本法の一部が改正され,前記のように法律名が改められ,上限金利が40.004%に引き下げられた(ただし,経過措置として,施行(1983年10月)後3年間は上限金利73%,その後さらに1991年10月までは54.75%とされた)。また罰金の上限額も300万円に引き上げられた。この2法を俗に〈サラ金規制法〉と呼んでいる。ところで,本法は,金銭貸付業者のみならず,ひろく金銭貸付を行うすべての者に適用される。ここにいう金銭貸借は,通常の金銭貸借以外に手形の割引および売渡担保その他これに類する方法によって行う金銭の交付または授受を含む。また本法は,礼金・割引金などみなし利息にも適用される。本法は,利息制限法の特別法ではなく,またそれに優先するものでもない。したがって,利息制限法の制限を超える超過利息ならば,それが本法の上限金利を超えない利息でも,利息制限法の適用を受け無効となる。ただ刑罰の制裁がないというだけである。なお,本法の上限金利を超える利息を契約したときは,貸主は本法によって処罰されるが,同時にその超過部分は,原則として公序良俗に反し無効である。借主は,不法原因給付について規定する民法708条但書によって超過額の返還請求が認められよう。
執筆者:森泉 章
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報